ブラックユーモアホフマン

検察側の罪人のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

検察側の罪人(2018年製作の映画)
4.9
ヤバい映画を見た。

有名・無名問わず芸達者な役者陣が適材適所にキャスティングされ、それぞれベストアクトを引き出されていて、それが凄まじい(且つ独特な)編集テンポで詰め込まれてるもんだから、情報過多で脳がショートする。
木村拓哉VS二宮和也はもちろんのこと、脇を固める(主に)おじさん達の演技がどれもヤバい。
誰もが認めるベストアクターインサポーティングロールは松重豊だろう。最近は「孤独のグルメ」などの影響か、良い人の役ばかりだった松重さんだけど、怪しい松重さん超ステキ。最高。
そして登場するやいなや、こりゃ相当なトリックスター出てきたぞ……笑笑 と興奮を禁じ得ない、酒向芳さん演じる松倉。『冷たい熱帯魚』のでんでん、『凶悪』のリリー・フランキーに連なる、近年の邦画にたまに出てくる”ヤバいオッサン”。ちょっとやり過ぎだろと思う人もいると思うけど、個人的にはこのやり過ぎ感が良かった。
その他、音尾琢真さん、大倉孝二さん、ちょっとの出番だけど山崎努さん、らおじさん達の「明らかにヤバい大人」体現具合が凄まじくて惚れ惚れする。監督の演出力に脱帽。
吉高由里子、山崎紘菜、そして芦名星の女性陣も素晴らしい。芦名星は『アウトレイジ ビヨンド』の高橋克典を思い出したわ。

アトロクのインタビューで名前が出た「TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ」や『ミラーズ・クロッシング』初め、ドゥニ・ヴィルヌーヴっぽいな、とかフィンチャーっぽいな、とかタンクトップのキムタクは『COP CAR/コップ・カー』のケヴィン・ベーコンみたいだな、とか洋画っぽいカッコいいルックや設定や展開のオンパレードだったので、洋画ファンにこそオススメ。
最近の日本映画で法律ゲーム映画というと『三度目の殺人』を思い出すけど、この映画は全く違うジャンル。『三度目の殺人』が法廷サスペンスであるのに対して、本作は明確にノワール。映画が進むにつれ、現実にファンタジーが流入してくる。現実側のヒーローがニノで、ファンタジー側のヒーローがキムタクと言えるかもしれない。ファンタジー感が強くなるにつれ、映画がドライブしてくる。編集も相まってクラクラしてくる。最後、どこに辿り着いてるんだかよく分からない。ヤバい映画だ。

19/06/21追記:
インパール作戦関係ねえだろ!という指摘が多いが、むしろそれこそニノの言いたいことなのではないか。そういう大袈裟なことを引き合いに出し、大義名分としているが、お前の個人的な復讐だろ!許されてたまるか!と、ニノはキムタクに言いたいのでは。