アキラナウェイ

検察側の罪人のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

検察側の罪人(2018年製作の映画)
3.6
検事でいる意味がない!!(机バンッ!)

最近マイブームのモノマネです。恐らく今週100回ぐらいやったら飽きるでしょう。

木村拓哉、二宮和也という二大スターがどうというより、クライマーズ・ハイ、関ヶ原の原田眞人監督作品を観たいというモチベーションで鑑賞。関ヶ原も台詞量が多く、超速早口の台詞回しだったけど、本作も同じ。

都内で発生した殺人事件。容疑者として浮かび上がったのは過去時効を迎えた未解決少女殺人事件の被疑者、松倉。事件を追うエリート検察官最上(木村拓哉)と駆け出しの検察官沖野(二宮和也)。やがて松倉に執着する最上が取った行動とは…。

先ず感心したのはニノの演技。以前からジャニーズの中で頭一つ飛び抜けているとは認めていたが、今回松倉に対する取り調べシーンにおけるキレ演技が凄い。早口で捲くし立て罵りなじる!!罵り捲り、なじる!!「人殺しと同じ空気吸って反吐が出る思いでやってやってんだよ!!」。そして、松倉の癖を真似て唇でパンッと音を立てる。ここはアドリブだそうで。間違いなく劇場の空気感が一瞬にして変わった。挿入される検察事務官橘役の吉高由里子による涙、自然と怖がる素振りを見せる演技も合わせて良かった。

では比較してキムタクはどうかと。「キムタクは何をやらせてもキムタク」という諺がありますが(本当はない)、序盤まではやはりキムタクはキムタク。この人、出来過ぎなんだよ。新人検事の教育官として御託を並べ、高級マンションに住み、休みはマウンテンバイクに乗って座禅を組みに寺を訪れる。出来過ぎて鼻につく(嫉妬とも言う)。

最上は別のキャストでも成り立つとも思ったが、面白いのは闇堕ちしていく最上が現在の木村拓哉が持つパブリックイメージと絶妙に重なっている所。SMAP解散劇で垣間見えた事務所の闇。その渦中にあった彼が、表向きは正しい行動を取っている様で、裏に透けて見える闇の部分。その、全くクリーンではなくなってしまったアイドルと言う名の虚像、木村拓哉のイメージが、本作の最上と見事にマッチしている点で、この映画はキャスティング部分で成功している。

一線を越えてしまった最上が中盤以降に語る言葉は精彩を欠いていく。これが現在の木村拓哉と重なって面白い。

映画全般で言えば、前半は丁寧に事を運んでいた筈が、後半は急ぎ足でドラマの描き込みが足りない。章立ても特に要らなかったと思う。

然し乍ら、前述の吉高由里子や闇ブローカー諏訪部を演じた松重豊、怪演を見せた松倉役の酒向芳、被疑者の1人弓岡を演じた大倉孝二とキャストは概ね良い仕事をしている。

二重、三重にレイヤーが重なるストーリーラインの内、最上の親友、衆議院議員丹野のドラマが個人的にはなかなか頭に入って来ず、苦労した。

正義とは何か?

真犯人を探すという事が、検察側の思惑、引いては個人の思惑に左右され、そこに警察組織もヤクザも絡んで、証拠のねつ造も冤罪の可能性も孕むのであれば、最早正義はその関わる人間の数だけあるではないか。だから法がある。なのにその一線を越える者が現れてしまうので、現代社会における正義とは定義付けが難しい。

後半のドラマ運び等に若干不満もありつつ、見応えは十分。ニノの演技を堪能出来ただけでも価値はあった。
最後に少しネタバレあります!















松倉を(法的に)罰したいから、と殺人事件の真犯人である弓岡を殺してしまう最上。いや、どうせ殺すなら松倉を殺れ。お前の恨みとは無関係な弓岡の命を奪うな。

犯罪者に堕ちてまで松倉を法的に罰したいとか。

検事でいる意味がない!!(机バンッ!)
↑これが言いたいだけです。