マクガフィン

検察側の罪人のマクガフィンのレビュー・感想・評価

検察側の罪人(2018年製作の映画)
3.5
冒頭の正義をメタ的にしたシンメトリーな心情背景は、均整と鏡のような構図に。迷いをメタ的にした螺旋階段を挟む事が効果的で、次第に保てなくなるようにシンメトリーの背景構図がズレていき、無くなることが印象的。役者の演技と相俟った全編に渡る緊迫感に引き込まれて堪能する。原作未読。

キムタクのアイドルとしてのエゴが取れたような演技に好感。抑えた演技ながら、ひたすら作品を引っ張る模様が強引に引っ張る役とリンクするようにも。情報量が多く、駆け足に進んでいく物語との相性も良い。二宮和也の猫背で体幹がブレている外見も役にハマる。

私憤に突き動かされた動機が荒唐無稽で、それに対する心象変化の経緯も微妙なことは残念だが、立場や状況に左右される正義、正義の理想論、人が人を裁く限界、映し鏡のような善悪のラインの揺さぶりに没頭する。

形骸化した縦社会の暴走をインパール作戦に例えることは良いが、トランプ・マスコミ・政権・財閥などの監督の主観をさり気なく押し付ける模様は如何なものか。せめて戦争に至った経緯から現代まで続く問題に絞ってほしく、手広く広げたようなで作品が微妙にブレた原因に。

ラストも足早に駆け抜けるようなで、もう少し余白による奥行きや余韻が欲しかったが、左右から上下に変わる構図も効果的で、飽きがこない重厚なリーガル・サスペンスは純粋に面白かった。