TaichiShiraishi

検察側の罪人のTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

検察側の罪人(2018年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

原作読まないで見た分、まさかこんな話とは思わず全然展開が読めずに超面白く観れた。
早口、固有名詞や専門用語説明なし、回想なし、登場人物多い、不親切な作りゆえに頭をフル回転させて見る感覚がたまらない。
それに会話が基本的に自然なのにたまに独特な台詞まわしが出てくるのもツボ。

それに加えて画の切り取り方も独特だし、カッティングも異常に早いし、セットや出てくるロケ地が全部非日常的なデザインだし、サスペンスで結末わかってるのに、もう一回観たくなるくらいプロット以外の部分も魅力的だった。



そんで原田監督は近年日本の問題点に対する批判も盛り込みまくり。
戦前回帰思想の政治家、ネオナチ、報道の自由低下、検察の暴走、人権派を装いながら金儲けしか考えていない弁護士。
そしてインパール作戦。
最近も東京オリンピック運営の無茶苦茶ぶりがインパール作戦に例えられたりしてたけども、改めて映画見たあと調べるとやっぱムカつくよなあ。

ちなみに最上が諏訪部に銃などを依頼する不思議なBARの名前は「チンドウィンの奥」って言うらしいです。インパール作戦で日本軍が行きも帰りも渡るのに苦戦したチンドウィン川のことです。

最上たちも当然インパール作戦のようなことを引き起こしてしまう日本の体質を問題視してるんだけど、結局正義感が暴走してインパールのような無謀な計略に打って出てしまう。
結果松倉、弓岡の両方とも司法で裁けないまま死亡。自分の罪を反省する事も無し。そしてそれを隠蔽して沖野に協力を求めるも完全拒否されるという体たらく。皮肉な話や。

映画がタロットカードによる章立てになってて
最上が堕ちていく三章目が「愚者」になってたのも示唆的。誰が愚者にあたるのかはっきりわかんないけど。最上だけのことではないだろう。

キムタクは新境地の演技。抑えめな声のトーンに、犯罪を犯した時の嘔吐に狼狽ぶりなどキムタクイメージを覆す演技だった。
二宮も松倉を恫喝する場面の迫力がすごい。単に怒鳴りがすごいんじゃなくて一通り叫び倒した後一瞬で声が冷静に戻るのが圧巻だった。

2人だけじゃなくて吉高さんも松倉さんも酒匂さんもみんなキャラが濃い役を見事に演じてた。


今年随一のサスペンスの傑作かつ怪作。カルト化しそうっていうかカルト化して欲しい笑
TaichiShiraishi

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