検察側の罪人、観賞。
得意な分野で天才肌の演技を披露する二宮和也、キムタク節を封印して新機軸の開拓を模索する木村拓哉、両者の演技合戦がトピックとなるだろう。その観点で観れば両者に何の思い入れもない自分でも、その成功と失敗双方で見応えのある作品だった。二宮の伸び盛りの鮮烈さとキムタクの葛藤と。
映画自体も二宮パートとキムタクパートに分かれるように思えるが、キムタク演じる検事のバックグラウンドや彼を取り巻く人物の相関関係が、二宮パートに比べて、よく言えばフィクショナル、劇画チック、悪く言えば浅くてバカっぽいのが気になる。
松重豊や芦名星はなかなか面白いキャラ造形だが、この物語に必要か？と言われると疑問が残るトゥーマッチさだ。キムタクの過去エピソードも中年の妄想てんこ盛りのセンチメンタルに傾いていて、重い割に説得力に欠けている。
ただこの雑なキムタクパートが本作のエンタメ強度を一段押し上げているともいえ、判断の分かれるところだろう。後半、ジャンルが変わる気配すらある。
良くも悪くも独特のオーラと実績を持つ木村は、ここでもその存在感で脚本の荒唐無稽さや穴をカバーする役目を負わされているようで不憫にも感じた。具体的には彼の「老い」に演じる人物のバックグラウンドを背負わせ過ぎで、語ったつもりになっているのがまずい。
また本作はタイトルである「検察側の罪人」というテーマから、驚くほどはみ出す部分がなく、物語という見地からすると2時間強かけて何を語ってきたのか唖然とさせられる。
劇中、照れ気味に早口でまくしたてられるギャグは全スベり、BGMのダサい使い方も本作の混乱を端的に示している。散見されるアートっぽい構図も謎。
自分は二宮パートのトーンで根気よく原作を捌くべきだったと思うが、二宮くんの取り調べシーンの演技は今後しばらく褒められるだろうな、というわかりやすさもあり、キムタクもこれが新境地と受け取れば、この座組みに期待される作品にはなっていると感じた。
