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検察側の罪人のyksijokiのレビュー・感想・評価

検察側の罪人(2018年製作の映画)
3.8
正義、権力、狡猾さ、欺瞞。
これらに共通することは、入り込みすぎると自分を見失うということだろうか。

ニノと木村くん、吉高ちゃんというところで多少和気あいあいとした部分もある検事物かと思いきや冒頭の研修シーンからいきなりいつもと違うキムタクが現れて驚かされる。

いつもより物悲しそうでいつもより暗いキムタク。何か陰がある感じというのがすごく出ていてよかった。後半の焦燥の表情や自信のない顔も、あんな表情することあるんだという感じがしたしすごく新鮮だった。

個人的に完全に殺されたのは沖野を演じる二宮和也による尋問シーンだ。声量と迫力とまくしたてるような早口。そして暴力的なふるまいは観ているこっちもビビってしまうような迫真の演技だったと思う。ニノというキャラも相まって非常に意外性があった。

シーンの切り方とか音の使い方も独特で、すごく面白い感じにブラックアウトしていくところが多くあったり、BGMから演奏者が実際にいるシーンに移っていくのとかすごく面白かった。エピソード形式での構成やそう撮るのかというような構図もいくつかあってこのあたりにはとても惹かれた。

ストーリー的にツッコミを入れたいところももちろんあるけど、沖野、最上、諏訪部の3人の演技が非常に光っていたし関係性も含めてとても良かった。

現代日本への批判とも取れるようなテーマや言動も出てきつつ、そこをメインパートにしすぎないことで松倉と最上、最上と沖野という対決の構図にうまく観客を引き込んでいる感じもした。

諏訪部が言った「俺は検察が描くストーリーになんか興味はない。あなたがこの先どんなストーリーを描くかに興味があるんだよ」という言葉がすごく印象的だった。

善と悪、罪と罰、生と死、これらの狭間に生きる者は共通して自分を何かで包み込み、演じているような気がする。この映画での最上も沖野もそんなベールがどこかにあった。
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