アキラナウェイ

ミスター・ガラスのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ミスター・ガラス(2019年製作の映画)
3.7
僕はこの作品、敢えて原題のGlassと呼びたい。
英語が苦手な日本人よ。この邦題では、日本のグローバル化は程遠い…。Glassはガラスじゃなくてグラスって発音する事ぐらいはもう誰でもわかるでしょ。
せめて「ミスター・グラス」にして欲しかった。

「アンブレイカブル」も「スプリット」も割と好きで、「スプリット」のラストで、まさかこの二作が繋がるなんて予想もしていなかった。その意味で非常に楽しみにしていた作品。

結論から言えば、シャマランが好きであれば面白いし、シャマランに思い入れがなければ(もしくは前二作を観ていなければ)面白くないのかも。

それぐらいM・ナイト・シャマランという監督はやはりクセが強い。

強靭な肉体を持つダン(ブルース・ウィリス)

23人格に加え最強のビーストを覚醒させたケビン(ジェームズ・マカヴォイ)

骨形成不全症を患いながら高い知性を誇るイライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)

この3人の男達。
シャマランは彼らをスーパーヒーローと位置づけているが、超人(スーパーヒューマン)という呼び名の方がしっくりくる。同じアメコミの出自でありながら、MARVELともDCとも完全に異なる、シャマランだとこうも特異な魅せ方で物語を紡ぐのか。

精神科医のエリー・ステイプル(サラ・ポールソン)は特殊能力を使えると主張する患者の治療を担当していた。彼女の元に集められた3人。彼らの運命が交差する。

以下ネタバレ含めて考察します。













19年の時を経て、ブルース・ウィリス、ジェームズ・マカヴォイ、サミュエル・L・ジャクソンが一堂に会しているだけで純粋にテンションは上がる!

序盤のダンとビーストモード・ケビンのバトルも!

スペンサー・トリート・クラークが「アンブレイカブル」から引き続き、ダンの息子を演じてくれている事も!

「スプリット」のアニャ・テイラー=ジョイが変わらず魅力的な事も!

そして今回のジェームズ・マカヴォイの七変化(いやそれ以上!)の素晴らしさ!!前回物足りなさすら感じた多重人格者ケビンを前作以上のバリエーションと圧倒的な演技力で魅せてくれる!!

三作続けて観てきた者として、これ以上ない、うれションポイントは沢山あるが…。

いや待てよ…。
シャマラン監督最新作としては面白くても、映画としてはどうなんだろう…と頭によぎる。

流石はシャマランで、3人の超人をバランス良く描きながら、それぞれのサイドキック(相棒)もうまく配置させている。それぞれの息子、事件の被害者、そして母を。

しかし、この点がどうも引っ掛かる。見ず知らずの彼らが都合良く何度も引き合わされる事や、アニャ・テイラー=ジョイ演じるケビンの被害者ケイシーがケビンをあそこまで理解し、寄り添えるだろうかという事。

キャラクター配置は美しいが、それがあまりに監督の思い通りに思える。しかし、冷静に考えればシャマランは彼らの創造主なので、キャラクターをどう動かそうが彼の自由。僕らが文句を言うのはお門違い。

この辺りの「独りよがり」こそがシャマランのクセの強さなのだろう。

これはユニバースなのか。
ただのシャマランの頭の中ではないのか。
いや、シャマランの頭の中がユニバースなのか。

MARVELでもDCでもない、ダンとケビンのバトルは空を飛ぶでもなく、光線が出るでもない。ただのどつき合い以上に発展しないのが辛い。

監視カメラから覗くPOV的な描写が多いのも、半裸で裸足のジェームズ・マカヴォイのアクションでは色々と制約があるからだろうと穿った見方をしてしまう。

オオサカタワー(いやいや、その名前!)で派手なバトルをすればいいってものではないけど、病院の庭で終始してしまうラストバトルが、やはり映画としては華がない。

素性がよくわからない三つ葉のクローバー組織により、強引に終息してしまう物語。広げた大風呂敷を慌てて畳むかの様に。

それは、正義も悪もない、ただ何もなかった事にしようとする事。それに対し、イライジャが一矢報いるが、それもイタチの最後っ屁程度にしか思えない。

少なくともダンの息子は可哀想だった。
少なくともダンは犯罪者ではないのだから。

結局、シャマランがシャマランの好きな様に19年振りにサーガを盛り上げ、シャマランの思う様に完結させた映画。

流石はシャマランだけど、個人的には彼にそこまで全幅の信頼を寄せていないので、面白さが突き抜けなかったのが残念。