Inagaquilala

ポルトの恋人たち〜時の記憶のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.0
去年の秋、「ポルト」というジム・ジャームッシュが製作総指揮を務めた作品を観て、ポルトガル第2の都市である、ポルトという街にすっかり魅せられた。この街にやって来た26歳のアメリカ人の青年と留学している32歳のフランス人女性の恋愛作品だが、古くからの港町である、この街のしっとりとした佇まいと異邦人同士のぎこちない恋愛がマッチして、なかなか好みのものであったが、それにも増して、街の中心を高架の電車が通る不思議な街の雰囲気がとても気になった。この作品も、そのポルトがタイトルに入っているので観賞したのだが、期待していた街の風景はあまり登場せず、ちょっと肩透かしを感じた。

それもそのはず、物語は18世紀のポルトガルと21世紀の日本を舞台にしたもので、ポルトの街はほとんど登場しない。基本的には、時代を超えたふたつの恋愛を描いた作品なのだが、18世紀のものは、そのきっかけがはっきりせず、どうしてこの2人が強い感情で惹かれ合うのか、いまひとつわからなかった。日本の浜松を舞台にした物語のほうは、それなりの恋愛模様が描かれており、作品はポルトガルが舞台の前半と日本部分の後半がきっちり分かれているのだが、後者をメインに描いて、前者はサブにしてインサートで処理したほうが良いように思った。無理やりにポルトガル部分の物語をつくった感じがして、はっきりしてタイトル負けしている。期待していただけに、残念な作品だった。
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