ノラネコの呑んで観るシネマ

今夜、ロマンス劇場でのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

今夜、ロマンス劇場で(2018年製作の映画)
4.4
これは予想外に良かった。
古い映画の中のプリンセスがスクリーンから抜け出して、映画監督を目指す若者と恋をする。
予告編だけ観ると「カイロの紫のバラ」のパチモンの様だけど、普遍的純愛物語を、溢れんばかりの映画愛で包み込み、実に愛すべき作品になった。
基本のラブストーリーは、オーソドックスな「人魚姫」の話型。
しかし劇中映画が作られたのが戦前、主な舞台は邦画黄金期でTV時代幕開けの1960年、そしてその過去を現在から振り返り、主人公が本作を執筆する設定の凝った多重構造。
しかもこれ、原作者のオリジナルなんだな。
細部まできっちり作り込まれた世界観、「カイロの紫のバラ」から「また逢う日まで」「タイタニック」などなど、全編に散りばめられた熱いオマージュ。
最後には、メタ的構造がファンタジックな男女の愛と作り手の映画愛を見事に一つに収束させ、気持ちよく泣ける。
まあフィルム缶が内側まで錆びた状態で何十年も経ってたら、ビネガーシンドロームでダメになってるだろうとか、現実的に人と接触しないで生きていける訳がないとか、いくらでも突っ込めるが、それは野暮。
とても魅力的なファンタジーだった。