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今夜、ロマンス劇場でのmueponのレビュー・感想・評価

今夜、ロマンス劇場で(2018年製作の映画)
3.8
モノクロ映画のお姫様がある日突然スクリーンから飛び出して来たら・・・。綾瀬はるか、坂口健太郎主演の純愛ラブロマンス映画、『今夜、ロマンス劇場で 』はとにかく映画”愛”に溢れる作品。

設定そのものが現実では絶対起こりえないファンタジーながらも、随所に鏤められたネタやオマージュ、物語構成や最後のオチに至るまでの流れが素晴らしく、ここ最近のオリジナル作品としてはかなりの完成度。

昭和の古き名作映画(日活のガイシリーズ)を切り取ったようなシーンの数々。純粋で個性的でどこか温かみのあるキャラクター。次々に移り変わってゆく綾瀬はるかの衣装がただただ美しい。

モノクロ世界と現実のカラー世界を対比させるためか、意図的にポップでカラフルな色づけがなされているのが印象的です。

注目すべきは過去の有名作品からのオマージュで、綾瀬はるか演じる美雪はオードリー・ヘップバーンと「ローマの休日」の純愛を連想させ、古い映画館を舞台にしているところは「ニュー・シネマ・パラダイス」。

劇中の『お転婆姫と三銃士』における動物キャラクターとモノクロ世界からカラーへの変化は「オズの魔法使い」。

健司(坂口健太郎)を「しもべ」扱いする美雪(綾瀬はるか)の話し方は、まるでTRICKの山田奈緒子(仲間由紀恵)と上田次郎(阿部寛)コンビ?を見ているよう。

かつての黄金時代から少しずつ斜陽してゆく日本の映画業界と全ての映画史の流れを凝縮したような脚本がお見事。

ナルシストなハンサムガイ=俊藤龍之介演じる北村一輝を一目見るだけでもこの作品は価値があります。

ストーリーそのものはファンタジーですが、恋愛の切なさは現実となんら変わりません。ぬくもりを求める人の心や相手を幸せに出来ない苦しみ、葛藤、二人の生き方の決意は、大切な人と共に生きていく素晴らしさを教えてくれます。

当たり前に出来ると思っていたことが当たり前じゃない切なさにこの作品の魅力を感じました。
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