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マイティ・ソー バトルロイヤルのRenのレビュー・感想・評価

4.0
天才タイカ・ワイティティによるシリーズ再建計画が完全に成功し、MCU作品の中でも屈指の出来となったソー単独作第3作。キャラクター人気はあるのに映画としては出来の良くなかったソーシリーズの地位を一気に押し上げた秀作と言い切って良い。

ムジョルニアを破壊し、ウォーリアーズスリーまでも殺してしまうという清々しいほどのリスタート。
今作の面白い点は、最強の神であるはずのソーを弱き者として描き、物語の3分の2程を巻き込まれ型のキャラクターに徹しさせたことにある。このままだと頭打ちになってしまったであろう「ソーの成長」を直球で描くのではなく、彼を立場ごと不利に立たせることで笑いと新鮮さと推進力を物語に与えていた。

全編に渡ってコメディ満載なのはもちろん、前作まで色彩が控えめだった画面設計もとことんカラフルに蘇っていたのも良い改変ポイント。ともすればB級感が満載になってしまう『スパイキッズ』などに近い雰囲気のセットなのだけど、このコミック感こそ作品のテンションに合っているし他作との差別化もできている。
80年代周辺のSF映画へのオマージュという意味で『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのそれとも近いかもしれない。後の『ジョジョ・ラビット』にも通ずるお洒落な色使いもタイカの強みかも。

捨て駒に甘んじない魅力的なキャラクター達も素晴らしい。全員が生き生きしている。特に今作を観てハルクとロキを好きにならない人はいないはず(言い過ぎ)。

ずっとふざけながらコメディしていたのに、意外にも深いメッセージに帰着するのも巧さ。「強さとは武器を持つことではない」という人間の話にもなるし、「人こそが何にも変えられない財産」という根源的かつ社会派なストーリーにもなれるのがニクい。「アスガルドは場所じゃない」。
コメディは観客を寛大にさせる強力な装置だと実感した。そんなことやっちゃっていいのかよなオチにも疑問や怒りは湧かずにドラマを感じられる傑作。一見の価値あり!

MCUファンあるある「絶対に『ラグナロク』って呼ぶ」

その他、
○ ケイト・ブランシェットの豪華な使い方。『マレフィセント』のアンジーっぽい。
○ 拗らせイキリツンデレブラコンのロキ、今作では冒頭から30分落ち続けるわ兄貴には投げ飛ばされるわ、完全におもちゃ扱い。もはやヴィランではなくピエロ。
○ タイカは制作にあたって、ジョン・カーペンター監督&ラッセル・クロウ主演のカルト的B級SF映画『ゴースト・ハンターズ』を参考にしたそう。主人公が事件に巻き込まれるだけで活躍しない点、ダメダメながらバディを組み戦っていく点などが確かに類似している。
○ Led Zeppelinの『Immigrant Song(邦題:移民の歌)』を最高にかっこよく使えた『ドラゴン・タトゥーの女』以来の映画。今作における「移民の歌」の「移民」とは何のことだったのか、ラストで明らかになる....。
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