デジタルリマスター版、劇場にて初鑑賞。
部屋にはヌードの切り抜き、豹柄の布団。
スーツを着ておめかししたり、
ハッパをふかしてみたり。
恋に浮かれて散髪したり、仕事が捗ったり。
大人に板挟みにされ、必死だったあの頃。
この作品を一言で表すなら
「若気の至り」。
モッズの冴えないイギリスの少年が、仲間達と一緒にスクーターで暴走し、薬漬けになり、仕事をサボり、セックスし、結集する。ただそれだけ。ずっと彼らの日常を覗いてるよう。
The Whoの「四重人格」をベースにした本作。公開された当時、モッズのリバイバルブームが起きたとされる影響力のある一本。
「モッズ」は、イギリスの若い労働者がロンドン近辺で1950年代後半から1960年代中頃にかけて流行した音楽やファッションをベースとしたライフスタイル、およびその支持者を指す。(Wikipediaより)
彼らは常に人とは違う個性を求めている。モッズが三つボタンの細身のスーツを守るためにミリタリーコートを愛用したことから「モッズコート」とも言われるようになったそう。
世間に中指を立てるティーンエイジャー。
大人達の作り上げたファックな社会の中でアイデンティティを見出したい、だけど不完全な自分一人では取るに足らない、そして族をつくり群れる。そんな不安定な少年少女の姿が痛ましくも眩しい閃光のよう。
知り合いの音楽好きに自称モッズの人がいて、その魅力を熱く語られたことを思い出す。なるほど。確かにイイ。
そしてその人が支持するだけのことあって、さすが、音楽がとってもイイ。特にロッカーズと並走してからが良かった。
エースのクラブでの没入ダンス、突き抜けてカッコイイ。
装飾がいっぱいついたこだわりのスクーターもなんだかカワイイ。
私は彼らの文化に共鳴する時期は過ぎてしまったし、彼らも道を引き返してはモッズを捨て、社会に適応していった。
終盤が真骨頂。この映画の全てを表しているよう。ラストが最高にエモーショナルで、胸に電流が走った。あゝ、美しい。完璧。
記憶の中の青い海は少し色褪せながら、眩しく光りを放っていた。
あの頃に戻ることはないけれど、懐かしんでは目を閉ざす、そんな青春の光。