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グッド・タイムのsobayuのレビュー・感想・評価

グッド・タイム(2017年製作の映画)
5.0
兄弟もの、ザ・コンサルタント、ウォーリアー、クライングフィストの系譜。銀行強盗からたった一晩の話。具体的な説明や心情描写は一切ないのに、兄弟の境遇がはっきり浮かび上がってくる。知的障害の弟は語る術を持たないし、兄は「前世は犬」って台詞だけが唯一の内面を語る言葉だった。実際犬に助けられるし、キーワードとしても犬は何度か登場する。

16才の少女もどんな子か語られることはないんだけど、存在感の説得力がものすごかった。あの子がふわふわと流されるの、見てて全く不自然さがない。物語の都合で動いてる感じが全然ない。ジャンキーのクズもそう。難しいことは分からないけど、これ脚本のクオリティがすごいんじゃなかろうか。JJリーの常軌を逸した泣き方一発の力という意味では役者力と演出力も。

そして何より終わり方、弟の心情をああいうかたちで見る者に伝えるのだな。弟がどんな質問で反対側に渡ったか、泣けて仕方なかった。傑作じゃないでしょうか!

ED、イギーの歌詞がまた沁みる。“堕ちた者も常に愛によって行動する”兄の暴走した愛情から一歩抜け出し、その外側から見たラストの精神科医や祖母の姿は全く別の印象に変わった。彼らは何も語らないのに。

こんな話を実際に兄弟で作っているジョシュ&ベニー・サフディってどんな人たちなんだろう。痺れました。
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