140字プロレス鶴見辰吾ジラ

グッド・タイムの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

グッド・タイム(2017年製作の映画)
4.3
”赤と青の明滅”

2017年、この映画を見逃したことを後悔した。

映画は一種の旅のようなもので
幕が開いたときから幕が下りるまで
映画と一緒に旅をしている、ようは没入である。
その旅の中で、先の見えないどこか遠くへ連れて行ってくれる
そんな映画の幕引きの瞬間が至高の喜びである。

今作「グッド・タイム」。
最悪の夜を”グッド・タイム”と吐き捨てるような
そのタイトリングに身震いする。

計画、実行、誤算、兄弟愛、金、無謀、計画、誤算、逃避

ニコラス・ウェンディング・レフン監督を想起するような、赤と青の明滅、寒色と暖色の交互に魅せる世界。クローズアップとハンドカメラの揺れと鼓動のように急き立てる電子音の鳴りやまなさ。常にこの物語はどこへ進むのか?どこで終わるのか?帰ることができるのか?と問い詰められ、追い詰められる没入感が、今に相応しくないザラついた画面と、犯罪捜査ドキュメンタリーのような空撮ショットの妙、視点の妙が、赤と青の明滅のドラッギー性ある没入感と不相応なネオンサインによって、この夜が明けないのでは?というプレッシャーと、物語の行方知れずさが絶望的に先を読ませないでいる。夜明けを迎えたときの、実際間ある経験的な夜明けの疲労感は、映画の旅性と映画を体験する喜びと苦痛を味あわせてくれた。エンドロールの虚ろさも含め、”グッド・タイム”と皮肉って口にしてしまうようだった。