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グッド・タイムのemilyのレビュー・感想・評価

グッド・タイム(2017年製作の映画)
3.8
 ニューヨークの最下層で、強盗をしてその日暮らしをしている兄弟。ある日銀行強盗をし逃げ遅れた弟だけが警察に逮捕されてしまう。弟は刑務所でいじめに合い、入院してるとの情報を仕入れ、兄はこっそり忍び込み弟を救出するが・・・

 スタイリッシュな音楽と音の交差が、スピード感と窮地を常に実感させる。色彩も赤や青など心情に寄り添い、色を繋いでいく演出も面白い。仲の良い兄弟、弟は知的障害がある。常に一緒に行動し、兄が弟の面倒を見る。無鉄砲な行動ながら、気転を効かせて上手く立ち回っていく兄だが、決して弟を足手まといにすることなく、常に力になろうとする。しかし今回はそのすべての行動が裏目に出てしまう。兄側からの描写により弟の心情は分からない。それは兄のエゴなのかもしれない。

ざらついた荒々しいカメラがしっかり兄に寄り添い、事態はどんどん悪い方向へ進んでいく。息遣いまでも伝わるようの演出、緊迫する状況を疑似体験し、一気にカメラは突き放していく。エンディングにかけて客観的な視点でカメラは兄を捉えていく。まるで飛べない鳥のように、囚われた箱(世界)からどんなに逃げてもどんなにもがいても逃げ出すことのできない奴隷のように。そのあっけないラストでしっかりと現実に戻されていく。エンディングで見える弟の心情が切ない。
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