shibamike

米軍が最も恐れた男 その名は、カメジローのshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

知れば知るほど、沖縄の歴史はむごい。
せんだ、みつお、ナハナハ!と遊ぶのも申し訳ない気がする。

カメジローさんが魅力ある大人物というのは映画を通してよく伝わってきた。
面白かったのは刑務所で囚人達が待遇改善を求めて暴動を起こしたとき、手に負えない看守達が同じく囚人だったカメジローに暴動を鎮静化するよう頼みに行った際、暴動の騒ぎをものともせずカメジローは独房で本を読み耽っていた、というエピソード。高尚な精神状態だったとか、そういうわけではなく、ただ単に読んでいた本(ユーゴーのレ・ミゼラブル)が面白くて夢中で読んでいた。というのが笑った。まあ、普通の神経では無理だと思うから、やっぱり凄いと思う。

泣けたのは那覇市長になったカメジローを引きずり下ろすため、米軍が給水を中止するという露骨な嫌がらせをした際、市民が市役所に長蛇の列を作った。何事かと市役所員が並んでいる老婆に尋ねると「米軍がカメジロー市長に意地悪するから、税金納めに来た!」と言うのである。市民の納税のおかげで那覇市はインフラ整備が進んだ。大衆から本当に信頼されていたのだなぁと感動した。今なら無理だろうな…。

米軍の執拗な嫌がらせも共産主義への恐れからだろうし、とにかく様々なものを恐れていた米軍、アメリカ。今から見返せば愚かだと思えることも渦中にいると分からないのであろう。相手(沖縄)の気持ちを考えればすぐに分かりそうなことでも分からないのである。カメジローさんや沖縄の人たちは共産主義なんてどうでも良かったと思う。ただ、他所から来たヤツらが自分達の日常で好き勝手しているのが許せなかっただけだと思う。いくらそれが戦勝国であったとしても!ベトナム戦争でもアメリカはそこら辺の考慮ができていなかったと聞く。もし本当であるならば傲慢だと思う。

この人は立派だった!という映画やドキュメンタリーを観るときに自分が気になるのが、大人物の闇の部分。本作ではカメジローさんの良い部分しか描かれていなかったと思う。家ではDVしていた!とか、酒癖が悪かった!とか何か無かったのであろうか。この映画が成し遂げた成果のみ描写するということなら、闇部分の描写は不要か。
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