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少女ファニーと運命の旅の一人旅のレビュー・感想・評価

少女ファニーと運命の旅(2016年製作の映画)
5.0
ローラ・ドワイヨン監督作。

ドイツ支配下のフランスからスイスへの亡命を図るユダヤ人少年少女の逃避行を描いた実話を基にした戦争ドラマ。

イスラエル在住の実在のユダヤ人女性:ファニー・ベン=アミの自伝「ファニー 13歳の指揮官」を基に、『ピストルと少年』で知られるジャック・ドワイヨン監督を父に持つ女流監督:ローラ・ドワイヨンが映像化した戦争ドラマの良作。二次大戦時、ユダヤ人への迫害が続くナチス・ドイツ支配下のフランスから安全な地スイスを目指す9人のユダヤ人少年少女の過酷な逃避行の行方をスリリングに描いています。

数あるユダヤ物の中でも『アンネの日記』『さよなら子供たち』『マイ・リトル・ガーデン』『縞模様のパジャマの少年』のようにユダヤ人の少年少女を主人公にした作品で、頼りになる大人が近くにいない中、13歳の少女:ファニーをリーダーとする9人の少年少女が自分たちの知恵と勇気だけで危険な移動を続ける姿が映し出されます。駅のホームでドイツ兵に発見されそうになる場面や貨物列車に隠れて移動する場面、森の中で息を潜めてドイツ兵をやり過ごす場面等、少年少女を待ち受ける“命の懸かったかくれんぼ”に画面の緊張感が絶えない作りです。

大人顔負けの冷静な判断力で窮地を乗り切っていく少年少女ですが、その一方で山の小川で水飛沫を上げながら無邪気に遊ぶ彼らの姿がそれまでとは対照的なムードの中に映し出されます。戦争は大人だけでなく罪のない子供たちをも容赦なく巻き込んでいきますが、勇気と覚悟を胸に危険な旅を続ける彼らも実際にはただの子供に過ぎないのです。川で無邪気に遊ぶ姿が本来の彼らであって、戦争が子供たちに大人としての行動を強いてきた事実を改めて突きつけています。子供が子供として生きられない不自由を招くのも戦争の大きな罪悪といえるのです。
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