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少女ファニーと運命の旅のTOTのレビュー・感想・評価

少女ファニーと運命の旅(2016年製作の映画)
3.7
13歳のユダヤ人少女ファニーが妹と施設の仲間を率いて国境に向かう命懸けの旅。
実話をもとに、大人が始めた戦争の中で必死に生きる子供、子供を守る大人、子供を撃つ大人を、誠実に映し出すローラ・ドワイヨン監督。
ファニーの妹ジョルジェットが、ユダヤ人が悪いならやめればいいと無邪気に言うと、ユダヤ人は悪くないし、やめることは出来ないんだよと、年長の仲間イゴールが優しく教えるシーンが痛切だ。
なんの決定権もない幼い子供にこんな辛い思いをさせる、こんな自己否定をさせる戦争に、否と言い続けなくてはいけないと、強く思わずにはいられない。
映画は時代を反映し、且つ語られるべき個人的な物語を普遍化して、より多くの人に問いかける側面があるはずなので、こういう作品が埋もれないでほしい。
そして近年、コンスタントに第一次、第二次世界大戦の映画が作られ続けてるのは、この不安で不寛容に傾きがちな時代を危ぶむ目があるからでしょ。
子供達が生き生きと遊ぶ姿が希望のように明るく尊く、旅のさなかの不安な表情を捉えて魅力的な撮影は『カフェ・ド・フロール』のピエール・コットローでした。
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