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ロスト・イン・パリのこーたのレビュー・感想・評価

ロスト・イン・パリ(2016年製作の映画)
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足は口ほどに物を言う。
めくるめくステップに誘われて、道化と歩く異国の街は、どこまでも幻想的で美しい。
女は最愛の叔母を訪ねて、憧れの都パリへ。
愛する姪をよびよせた老婆は、自由を求めて自ら迷子に。
ぼくの伯父さん、ならぬ、わたしの叔母さんを探して歩くうちに、女は自分自身も迷子になる。
迷子が迷子をよび、出会ったのは浮浪の道化。
俗世間から離れ、自由の女神のもとで気ままに生きる男は、能のワキのように狂言回しを演じる。
道化が物語をかき回し、さらなる迷子をよび、死から復活(笑)し、迷子の叔母と姪をついに出会わせる。
老婆は街でいちばん高い塔に昇り、天国にいちばん近い場所から愛するパリの街を見下ろす。
その暁に照らされた街並みは、やわらかく輝いてどこまでも美しい。天国とはかくも心地いいものかな。

映画は動く絵である。
美しい風景と、身体表現。妖しいステップに魅せられて、街の美しさはいや増す。
そこに言葉を重ねるなんて野暮だ。見てわかれば、言語がわからないひとたちにも物語を伝えることができる。
妖しいステップのリズムが、わたしたちを幻想的な映画の世界へといざなう。
足が代わりに語ってくれる。
とことんお洒落で、ちょっぴり可笑しい。天国のように贅沢な時間。映画とはかくも贅沢なものかな。