おりょうSNK

エキストランドのおりょうSNKのレビュー・感想・評価

エキストランド(2017年製作の映画)
4.0
ゴミみたいな実績でも、それさえあれば次の仕事で騙される人間が日本映画界にはいくらでもいますから

「エキストランド」
2017年 日本 90分
U-NEXT鑑賞

「フリーター、家を建てる」という映画撮影の地に選ばれた街、えのき市。どこにでもある片田舎の地味な市はこの降って沸いた話に浮き足立ち、急遽フィルムコミッションを立ち上げて撮影の支援を行うが…

マニュアルを熟読してなかったばかりに、低予算で映画を撮って次のステップにしたいだけのプロデューサーにまんまと騙されるえのき市とエキストラたち。
毎日の飲食代は市が負担、ちょっと使うだけだからと撮影場所に提供した役場は職員が追い出されて仕事にならない、えのきのオブジェを勝手に移動する、エキストラの弁当に箸がついてなくて文字通り手弁当を強いられる…徐々に不信感と不快感を募らせていく職員とエキストラたち。冒頭の言葉は、そのプロデューサーのものだ。東京の単館の深夜に1週間ぐらい掛かる程度の映画だと自ら言いながら、まちおこしになるぞと人参をチラつかせて平気でだまくらかす嫌なやつを吉沢悠という、顔は見たことあるけど名前を知らなかった俳優が演じている。懲りない奴という絶滅しないけどなんらかを危惧する種だ。

特に面白いのが、はんにゃ.金田率いるフィルムコミッションが「撮影原理主義」みたいになって、上述した市の職員やエキストラたちと衝突して分断が生まれてゆくところ。
職員が「それはダメだ」と言っても「なんで?これ映画ですよ」と返す金田は持てるキャラクターがそっくりそのままハマっていて、挙げ句の果てにはエキストラに演技指導したり、「あれ邪魔ですよね」と枝を切ったり、実はお粗末な脚本すぎてこの映画はこの世に不必要なのではないかと悩む監督の仕事を勝手に奪う始末。


「東京ウィンドオーケストラ」「ピンカートンに会いにいく」の坂下雄一郎監督らしい、小さな可笑しみを重ねながら、静かな街に生まれる分断を通じて、人を呼ぶことの功罪や、誰も望んでないものを作ることの無意味さを問う。好物なストーリーだった。
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