たつみ

オトトキのたつみのレビュー・感想・評価

オトトキ(2017年製作の映画)
5.0
栄光と挫折、そして解散…十数年前に世間を熱狂させた伝説のバンド。彼らが再集結を果たし、怒涛の勢いで一年余りを駆け抜ける。
ともすればフィクションも真っ青な激動のドキュメンタリーになりそうな、彼らの足跡。
しかし、この映画は実に淡々とした目線から、物語を紡いでいく。

熱狂するステージと観客。それとは裏腹に、静かに、しかし確かに動いていくバンドメンバーの人生。過去の自分たちを取り戻すように、そしてそこから一歩進むようにもがく彼らと、それを取り巻く周囲の人々。
カメラはそれらを常に一歩引いた姿勢でとらえる。
どの視点にも重きを置きすぎないというのは、ともすればテーマがあやふやになりそうではある。しかし映画が進むにつれ、色々な人々の挙動や思いに触れていくと、段々と彼らの一挙手一投足に目が離せなくなっていく。どんなことを思っているのか、何を話しどう行動するのか。彼らの何が、人を惹きつけるのか。それを映像から、自身で読み取りたくなるのだ。

唯一の演出と言っていいシーンで、照れ臭そうな笑顔をかわしながら演奏をする彼ら。その後ろ側に何があるのか、映画を通してそれを垣間見ると、ライブシーンがより味わい深くなる。そしていつしか、そんな彼らの「この先」を見てみたい、という思いにかられていく。
普通の映画であれば、上映が終われば物語はそこで途切れる。しかし、現役して戻ってきたバンドの物語は、この先も続いていくのだ。
それを示すかのようなエンドロール後の最後の画と、主題歌の余韻がとても心地よい。
そして映画館を出た後に、彼らの音源や映像に、そしてライブに触れたくなる。

音楽はもちろん、人それぞれの「物語」に興味を持つ人に観てもらいたい作品。
たつみ

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