Inagaquilala

世界を変えなかった不確かな罪のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.1
ずいぶんと大仰なタイトルだが、話はかなりミニマムな作品。パートタイムで働くふたりの女性の過去と現在が交錯しながら進む贖罪の物語だ。この過去と現在の境目がはっきりしていないため、最初は少し戸惑う。時間の配分や画面の色調に少し工夫すれば、すんなりと入ってくると思われるが、逆に意図的に境界をぼかしているのかもしれない。どちらにしろ、この構成は少し「技」を必要とするものだ。

ふたりの女性はそれぞれ過去に起きたある出来事に「罪の意識」を抱いている。しかし、それは「罪」と呼ばれるような悪意からのものではなく、あくまでも「過失」にすぎない。このあたりの贖罪の意識がやはり大げさで、大上段に振りかぶったタイトルとともに、内容に希薄さを感じてしまう。それはひとりひとりの人物に対する深堀りがなされていないために起こるもので、もう少し深化させた複雑な人物設定が必要だ。

作品の中盤から後半にかけては、このふたりの女性のミニロード・ムービーになるのだが、途中で加わる放浪気質の男の存在がまったく物語としては機能していないように感じた。現れ方も偶然に過ぎないし(もう少しこの再会については考えなければいけない)、旅に参加する意味がドライバー以外の何の意味も持っていない。もしここで彼を登場させるなら、それなりの彼のバックストーリーを描写する必要があるだろう。

とにかくタイトルの大仰さに象徴されるように、この作品は小さなことをことさら大きなものに見せて、その結果として中身は何も語っていないというふうに感じた。チラシに「わたしたちが今までに犯してきたいくつもの罪は、」とか「取り戻せない罪と過去を、抉る101」との惹句があったが、それならばもう少し「罪」の内実をシリアスに深化させたものにしなければ、見応えのある作品とはならない。タイトルにある「不確かな罪」とは、逆に開き直りのようにも聞こえてしまうのだが。そんななかにあって妻子を喪った葬儀屋役の外波山文明の演技はなかなか印象的だった。彼にいちばん「確かな罪」の意識を感じた。
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