このレビューはネタバレを含みます
とにもかくにも父バーフバリが最強セクシーないい男すぎて…!優雅な立ち振る舞いに不敵な微笑みに流し目に照れ笑い、果ては死に姿まで完璧にかっこいい。マヘンドラと顔は同じはずなのに、どうしてこうも違うのか!?
バーフバリ!!バーフバリ!!っていう熱狂的な歓呼も、そこに込められた民衆のアマレンドラへの思慕を知るとぐっと重みを増す。あれは息子ではなく彼に向けられたものだったのだな…。
終盤のサーカスのようなアクションの凄まじさにはもう、度肝を抜かれ続けて笑うしかなかった。マヘンドラは人間じゃなくてスーパーヒーローなんだよね!?
そして特筆すべきは、前編から飛躍的に進歩した女性描写。『王の凱旋』単独で観たらそこまで先進的とは思わないかもしれないけど、酷かった一作目と比べると雲泥の差で、その心意気に感動してしまった。「王女様、指は四本です」にもときめいたけれど(息子マヘンドラだったら間違いなく「僕が守ってあげる♡」とか言い出すところ)、やはり白眉はセクハラ野郎の指チョンパからの処刑シーンである。
初見時は、首を掻っ切るところまでデーヴァセーナ様がやればよかったのでは?と思ったけど(もちろんそれでもいいのだけど)、この映画の中では、アマレンドラがやることにより大きな意義があったのだと思う。武芸に秀で知力に優れた、誰もが慕う徳高きアマレンドラは、この作品世界の理想や美徳を体現する存在だからだ。
女性だけが立ち上がるのではなく、男性の側からもゼロトレランスの姿勢を示すことで、性暴力を絶対に許さない社会を作っていこう。そこで過ちを正すことができないならば、たとえ愛する祖国であっても誇りに思うことはできない。国母シヴァガミを諫めて聞き入れられず、デーヴァセーナと共にマヒシュマティ王国を去って行くアマレンドラの姿は、そうした制作陣の決意表明と見えた。そして、この一作目との見違えるほどの違いは、悲惨な過去との訣別を目指す近年のインド社会の闘いの軌跡とも重なっているのではないだろうか。
(邦画はほとんど観ないから知らないけど、日本にこんな娯楽映画がありますか?同じように性暴力が横行している本邦だけど、少なくとも、こういう作品が作られる素地はないと思う。恥ずべきことだ。)
女性を人間として尊重し、敵が現れれば肩を並べて戦うべし。性犯罪者には死あるのみ。この宣誓を法と心得よ!!今のインドではこれが理想の王なのだ。息子は救いようのない盆暗だが、これから国母デーヴァセーナ様に叩き直されるであろう…。
2017年の締めくくりに大変良いものを観ました。