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バーフバリ 王の凱旋のsatoshiのレビュー・感想・評価

バーフバリ 王の凱旋(2017年製作の映画)
4.5
 観る前と観た後を比較すると、
【鑑賞前】
 「まぁ特に観るものも無いしね。面白いかもしれないし。観てみるか」
               
【鑑賞後】
 「バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!」

 これが全てです。これでだいたい分かっていただけるかと思います。でも感想を詳しく書いておきますね。


 「バーフバリ」2部作の完結篇。前作はコテコテの展開に古今東西の映画の要素をブチ込み、それらを何の衒いも無く素直にカッコよく、アツく描くことで純粋に面白い作品となっていました。本作ではこの傾向がより顕著に感じられ、ある種、映画の原液のような作品となっていました。

 本作は前作の続き、つまり父・マヘンドラの話から始まり、息子・シブドゥが国を奪還するまでを描きます。前作は冒頭がシブドゥの旅立ちであり、故に冒険もののようなワクワク感がありました。しかし、本作の冒頭はマヘンドラの話。故に、どちらかと言えば宮廷もののような内容となっています。そして前作で作品の解説が一通り済んでいるため、内容はいきなりアクセル全開です。とにかく毎シーン毎シーン見せ場の連続です。それでいてストーリーが全く止まらないのだから末恐ろしい。しかもそのアクションも一々凝っています。これは前作からの傾向ですが、本作ではより工夫されていると思いました。例えば序盤のマヘンドラとカッタッパのコンビネーションしかり、デーヴァセーナとの共闘しかり、終盤のバラーラデーヴァとの戦いしかりです。さらに素晴らしいのは、最後に拳での殴り合いもやってくれることですね。シンプルなアクションですが、故に燃えます。

 そして2作目にしてより明快になったのが伏線の張り方の巧みさです。本作には、前作にあったのと同じようなシーンが何回も登場します。例えば、マヘンドラとデーヴァセーナの交流は前作のシヴドゥとアヴァンティカのそれを思い起こさせますし、終盤でカッタッパが赤ん坊のシヴドゥの足を額に当てるシーンは前作のラストを彷彿とさせます。他にも本作冒頭とラストのアレとか、マヘンドラの剣の使い方など、挙げればキリがないです。一番燃えたのは「鎖」。母を苦しめてきた象徴である「鎖」を使い、バラーラデーヴァをボコボコにするのは素晴らしい。これにより、以前のキャラの行動が遡って意味を持ってきて、話の厚みが増していると思いました。また、遡って前作にも意味を持たせられているため、2部作全体にもより厚みが出たと思います。後、やっぱり黄金像の使い方ですね。「偽りの王」の象徴みたいなものですが、あれが最後で果たす役割を観ると、皮肉が効いた演出をするのに一役買っています。

 それ以外でも素晴らしかったのはただ本作をただの「昔の話」として終わらせず、「今の話」としてアップデートしていた点です。デーヴァセーナをはじめ、女性陣は全員自立した存在として描かれていたし、意図せずしてでしょうけど、痴漢行為に対する制裁とかにもそれを感じました。しかもそれが原因で姑と関係が悪化するとか最高でしたね。

 後は全体の構成も良く考えられていたなと。確かに歪と言えば歪なのですが、2部作全体を通してみると、「シヴドゥ視点の話」として上手いです。何もわからず旅に出て、自らの真実を知り、最後の戦いに向かう。つまり、観客は完全にシヴドゥと同化して映画を観ています。

 このように、本作はただの大味アクションではなく、結構考えられて作られています。ですが、内容は単純そのものです。変化球など一切無い。でもとても面白い。この点で、私は本作を映画の原液のようだと思いました。本作は昔からある「貴種流離譚」で、内容もエンタメにおける「お約束」のみで構築されている為です。でも、それを丁寧に計算して作り、しかも「現代の話」としてアップデートまでしている。このようなことは、過去の名作が繰り返し行ってきたことです。この点で、本作はあの世紀の大傑作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』と似ていると感じました。面白さはさすがにあっちの方に軍配が上がりますけど。最高でした。
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