真田ピロシキ

バーフバリ 王の凱旋の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

バーフバリ 王の凱旋(2017年製作の映画)
2.4
前作は自分が王子様だと知った瞬間に育ての平民母を他人扱いして女にセクハラ紛いのアプローチをかける魂レベルでカーストが染み込んだ主人公に強烈な不快感しか抱けなかったが、2を見たらバーフバリ人気が少し理解できた。みんなが最高って言ってるのは親父のことだったんだね。確かにこの親父は人間が大きい。王位を争う邪悪な従兄弟は基より、国母サマと尊敬されているシヴァガミだって赤子の主人公を命がけで逃したのがコイツだと分かるまでは大国意識を鼻にかけて「女性を人形のように扱うのはどうかと」という尤もな言葉に「何が悪い」と居直るトランプもしくは自民党みたいな女でしかなかったが、最期の時に妻子よりこの母を気にかけられるバーフバリは人の心を動かせる徳があると感じる。140分ある映画のうち100分以上は親父の話。親父だけで良いんじゃないかなあ。生まれに恵まれただけの息子は邪魔だわ。

親父が話の印象を良くしたおかげで評判のアクションにも気が入り、大嫌いな息子が主人公の時でもクライマックスの城攻めが楽しく観れる。丸太ピタゴラスイッチ、チェーンパンチ、空を飛ぶ盾兵に回転刃付き戦車などがバカバカしくも痛快。CGはかなり使っているようだけど、リアルすぎない作り物感が特撮的で荒唐無稽なストーリーに馴染んでいる。精巧すぎるCGを金の暴力とばかりに2時間以上画面中にばら撒かれても逆に白けるのだ。

このスコアでも前作に比べると自分の中では爆上がりと言っていい。それでも否定意見を全然見ない賛一色に染まってるのは理解に苦しむ。神話的ストーリーで価値観が昔風なのを踏まえていても、現代の映画でこの古さは看過できない。血筋だけが取り柄の日本漫画の悪しき因習みたいな息子は論外。親子愛を強調した親父バーフバリ周りも保守的すぎる。民は優れた王であるバーフバリに盲目的なまでに傅いていて「あなたの法は我らの法」なんて歌を口にするほど個人崇拝されてるのは気持ちが悪い。権威への従順さは悪政の元。我が母国の惨状を見れば一目瞭然。欧米作品なら批判されると思うのだが、インドならOKになるのか?リベラル左派を標榜している人が本作を無批判に大絶賛するのには矛盾がないのだろうか。自分は受け入れられかった。