叡福寺清子

マーシャル 法廷を変えた男の叡福寺清子のレビュー・感想・評価

3.8
終盤のローリン・ウィルス検事によるジョセフ・スペル容疑者への質問.その返答とフォスター判事の決定に全てが集約される約二時間.そんな印象でありました. こんばんわ三遊亭呼延灼です.
黒人差別が根強く残る1941年.黒人運転手による雇い主の奥方レイプ&殺人未遂事件が発生.弁護に赴くのは全米黒人地位向上協会唯一の弁護士サーグッド・マーシャル.地元のユダヤ人,サム・フリードマン弁護士の協力を得て裁判に望むも,フォスター判事が「州外の弁護人」は認めないとの命令が.
ここで多くの人が判事の判断に対し「差別すな!」と怒りを覚えたことでしょう.でも判事はマーシャルが黒人だからではなく「州外」だから認めなかったのです.それが建前であっても法的に州外の弁護人を認める根拠がないかぎり覆す事はできません.法律とは所詮文章であって,運用する人間次第で解釈は変化しうるという印象を視聴者に植え付けた後にあの決定ですよ.気持ちよかったですねぇ.「間」も最高でした.あの「間」は学ばねばなりません.そしたらあたしの落語だってもっと・・・
もちろん,あの「間」を引き出すきっかけとなった検事によるスペル容疑者への最後の質問.2019年に生きる私達にとってはその答えは自明でありますが,当時の検事,いや当時のグリンゴには本当に想像の埒外だった,差別する側はその行為が差別だと思わない,あまりにも日常に溶け込んでいるため差別とすら思わないグリンゴの思い上がりが集約した質問でした.まぁ,グリンゴも蔑称なので偉そうなこと言えませんが.
差別すな!と訴える事は簡単です.が,言うは易く行うは難し,切符はやすし国鉄へきよし,であります.考えてみりゃあたしだって,漫才師っていうだけで「孫堅孫権」の二人に差別まがいのひどい言葉を浴びせてたもんなぁ.ちょっと反省しなきゃ.でも「どもー,父親の孫堅です.次男の孫権です.二人合わせて孫堅孫権.今日も張り切ってゴーゴゴー呉―」って挨拶はどうかと思いますよ.
一方の弁護士は黒人とユダヤ人のチームのあれやこれやは話が難しいので,どっかの賢い方のレビューを参考にしてくださいませ.めんどっちくなってきたんですもの.
お,うまいこと孫権が来やがった.「おーーい,仲謀.昼飯行かねーかーー」