Inagaquilala

となりの怪物くんのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

となりの怪物くん(2018年製作の映画)
4.0
「君の膵臓をたべたい」で非凡な才能を見せた月川翔が監督。絵づくりにこだわりを見せる月川監督らしく、主人公のふたり、春(菅田将暉)と雫(土屋太鳳)が互いに思いを通わせる重要な場所に、神戸の絶景デートスポットである諏訪山展望台ヴィーナスブリッジを選ぶなど、観ているだけで深く印象に残る映像を次々と繰り出す。「君の膵臓をたべたい」でも見せた制服の色に対する選択も鮮やかなオレンジと、いったいこんな色の制服があるのだろうかと思ってしまったが、作品のなかでは、この制服の「青春色」もかなりの効果を上げている。

1993年生まれの菅田将暉と1995年生まれの土屋太鳳の高校生カップルは、そろそろ無理が出るのではと思っていたが、これがまったくそれを感じさせないのは、作品全体を包むポップな空間感覚かもしれない。とはいえ、月川監督は慎重に内面描写も行っており、登場人物たちの心のうちも丁寧に表現していく。そのあたりが、外面的なファッションだけではなく、人物の内部にも深く入り込む、この監督の卓越した才能であるように思える。

原作が少女向けのコミックであろうと、月川監督の視線は常に人間を描写することに努めている。このあたりが、さすが東京芸術大学大学院映像研究科出身の俊才というところかもしれない。これまで青春物が多い月川監督ではあるが、もう少し対象年齢が上の大人の作品に挑戦した作品も今後は観てみたい。とにかく、いま自分としてはいちばん注目する若手監督のひとりであることに変わりはない。
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