こたつむり

ブラッド・ワークのこたつむりのレビュー・感想・評価

ブラッド・ワーク(2002年製作の映画)
4.2
♪ どうして生きているのか この俺は
  そうだ狂いだしたい 生きてる証が欲しい

主人公は元FBI捜査官。
退職のきっかけになった(と思われる)心臓移植手術を終え、どことなく“違和感”を抱く日々。そこにある女性が訪れて「あなたの心臓は殺された妹のものなの」と告げる…そんなサスペンス。

いやぁ。これは地味に良作だと思います。
旧き良き刑事ドラマを下敷きにしているので、目新しさはないんですけどね。“事件を追う”という観点で捉えれば、思わず前のめりなのです。

伏線が分かりやすいのも良いですね。
「ああ、そうだったのかあ」と驚く作品も好きですが、スルスルっと飲み込める物語も魅力的なのです。肩ひじ張らなくて済みますからね。

また、登場人物の個性も見事に確立。
成り行きで相棒になる隣人や、口が悪い刑事には頬が弛みました。やはり、ゴリゴリの刑事(ではないけど)ドラマだとしても“笑い”は大切だと思います(ドーナツを食べる場面のシュールさよ…)。

それに犯人が見事なまでに“クソ”なのも爽快。
“共感を得ることが出来ない愛”を秘めているので、胸糞悪い存在だとしても半周回って微笑ましいのです。

まあ、そんなわけで。
クリント・イーストウッド監督の作品としては評価が低いようですが(興行的にも失敗したようです…)テーマ性や有名な俳優さんを求めなければ楽しめる逸品。特に“土曜ワイド劇場”が好きな人には激烈オススメです(僕は火サスより土ワイ派なので…)。

ただ、あえて難を言うならば。
分かりやすい“メロドラマ”は排除してほしかったかな。と言うか、考えようによっては“姉妹の百合もの”に変わりますからね。ちょっと特殊な嗜好ですなあ。

ちなみに私的な意見ですが、刑事ドラマに男女の絡みは不要です。追う側と追われる側の交錯がサスペンスの“濡れ場”ですからね。そう考えると本作の犯人は最高でした。確実にヘンタイですからね。
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