mare

リバー・オブ・グラスのmareのレビュー・感想・評価

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)
4.0
何者にもなれず人生の旬の時期を通り過ぎ、そんな飽和した日々の中で起きた突然の危機に心躍らずにはいられない彼女。空虚な逃避行の中で一抹の不安を抱きながらも無責任なヒロインになれた憧れのひととき。全てが空回りに、想像だけが膨らんでいく、必死なのは自分たちだけ。ロードムービーなのかラブストーリーなのかクライムなのか、どれ一つとしてカテゴライズするにはこの2人はまだ未熟で滑稽にすら見えてしまう。しかし映画として俯瞰して観ると、このフリーダムさが不思議とクールに映ってしまう。これははじめてジャームッシュ映画を観た時の感覚に近い。ジャズドラマーの父親が叩くマックスローチばりに自由なドラムオンリーの劇伴も、この荒涼としただけの風景に遊びを与えているし、一見まとまりがないようでかなり洗練された映画だと思う。あまり深入りしすぎたら色のない世界に逆戻りしてしまうような危うさにユーモアが絶妙に混ざり合っている。90年代の空気感そのものだ。
mare

mare