horaAya

リング 完全版のhoraAyaのレビュー・感想・評価

リング 完全版(1995年製作の映画)
3.4
『貞子』を見たのでこちらも初鑑賞。

『リング』の初の映像化作品ということで、映画版よりも原作に近いところが多くありました。とはいえ改変されているところも多く、テレビ用の表現の規制もあるだろうことを考えると良くまとめられている印象を受けました。

わかりやすい2時間サスペンスドラマのフォーマットに『リング』を当てはめ、起こった不審死の犯人を捜すかのように奔走する浅川と高山のバディ作品として成立させつつも、『リング』の骨子を損なうことなく展開させる脚本のうまさを感じました。

恐怖演出はほとんどないにしても、心霊ホラーとしての雰囲気を完璧に作り出していた劇場版にくらべて、呪いのビデオというオカルトな存在を扱いつつ、違和感なく2時間サスペンスとしての雰囲気で押し通す手腕に驚きました。

呪いのビデオの内容もほぼ原作どおりといった感じでした。十分に雰囲気は出ていたのですが、映像としての魅力はほとんど感じず、なぜ劇場版で大きく内容が改変されたのかが分かる出来でした。劇場版では、ワンカットワンカットに現実から乖離した違和感を意図的に含ませることで、生理的嫌悪感に訴えかけるような迫力と気持ち悪さ。そしてこの世のものではないことに対する説得力があったように思います。

瞬きの伏線や「しょーもんばかり、ぼーこんが来るぞ」へと辿り着く過程は文章で読むからこその魅力なのであって、映像にすると一気にチープになる。キーとなる男についても、ただ原作を考えなしになぞったとしか考えられず、非常に残念に感じました。

ただ、虚構が現実へと影響を与えることの描写は本作の魅力だと感じました。これも原作そのまんまなのですが、あえて映像として見せることで、荒唐無稽な存在に現実的恐怖を感じていくことに説得力を持たせていたし、カウントダウンのような文字のチープさも私的には結構好き。

何より興味深かったのは、貞子の睾丸性女性化症候群について言及がされているところ。劇場版ではここはスルーされ続けていて、最新作の『貞子』も、どれに基づいた貞子として描かれているのかがイマイチわからなくなってしまっている。その点で本作は貞子を男性として描いたという点では最も原作に忠実な映像化だと感じました。

ただ、呪いのビデオを通じて死の概念にまで言及し、牢獄としての生に囚われることの必要性まで論じてしまった劇場版のような深みは本作には感じなかった。冒頭にも書いた通り、良くも悪くもテレビ用2時間サスペンスであり、表面上の物語を楽しむことに特化したライトな作りとなっているからこそ後に引くものは特になかったように思います。
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