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続日本暴行暗黒史 暴虐魔のimaponのレビュー・感想・評価

続日本暴行暗黒史 暴虐魔(1967年製作の映画)
4.0
小平義雄事件に材を得て、その類い稀な人物像を通して、戦中、戦後の問題に迫ろうとした異色作。

山下治の怪演に尽きる作品。連続暴行殺人の丸木戸義雄(山下治)の手口は絞殺。したがって首締められる苦悶のご婦人方の表情を見比べて楽しめます。
また、丸木戸義雄は死体マニアでもある。ねぐらにしている洞窟に自分の殺した女を全裸で寝かせている。この死体がいつまでも実に瑞々しいので、それって死体マニアにとって嬉しい事なのか?悲しい事なのか?丸木戸君にとっては嬉しい事なんです。

一つの死体をきれいに磨いてあげていると向い側の死体が何かの拍子でドタっと倒れる。その死体に対して「どうしたぁ、お前、ヤキモチ妬いてんのかぁ」と話しかけるんだけど、もう山下治はホンモノのようです。

陰鬱な雰囲気の中、電波系殺人鬼丸木戸。村の若い者からバカにされ、言葉もゴニョゴニョしているのだけれど、彼の内面から語りかけるもう一人の丸木戸はとてもまともな声、しゃべり口です。
そんな丸木戸ですが、犯行のきっかけは駆け落ちまでしようという娘(ヨシエ)の父親との確執。ちゃんとレンアイしていたのです。

ラストの検察のモノローグは失笑もの。何が「罪を憎んで人を憎まず」なんでしょう。よく解りません。ただ、あきらかに精神鑑定で責任能力を問われないタイプの男なんだけどちゃんと死刑になる所は潔くて良い。

死体の中に夏純子似の女性が居ると思ったら、本当に後の夏純子だそうです。目立つ目鼻立ちですからね。
陰鬱な雰囲気に拍車を掛ける全編に流れるクラシック曲はフォーレの「夢のあとに」
この曲は「過ぎ去ってしまった愛しい人とのひと時をもう一度と、やるせない思いの歌」だそうで、ウヒョヒョヒョヒョ、ヨシエを思う丸木戸の曲として選曲がナイスですねー。
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