TAK44マグナム

スターシップ9のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

スターシップ9(2016年製作の映画)
3.7
宇宙にひとりぼっち。


女子2人が何だか知らぬ間に恐ろしいバトルに発展してしまう「ヒドゥンフェイス」の脚本家アテム・クライチェが監督したSFサスペンス。
「ヒドゥンフェイス」も限られた空間でボッチになる恐怖を描いていましたが、更に究極の孤独体験を描いているのが本作でありまして、なんと広い宇宙をゆく宇宙船に「たった1人で何十年」という寂しすぎる女子が主人公。
話し相手は船をコントロールしているAIのみ。
なんだか「パッセンジャー」前半のクリス・プラットみたい。
そんな孤独女子である主人公エレナを演じるのは、こちらも「ヒドゥンフェイス」で奥さん役であったクララ・ラゴ。
目がキリッとした美人さんです。
結構好き。
この人を見ているだけで満足できたので、クララ・ラゴじゃなかったらチョイきつかったかもしれません。
まぁ、アナ・デ・アルマスでもオリヴィア・デヨングでも、好みの女優さんなら誰でも良いのだけれども。


地球の環境破壊が限界をこえ、人類が存続するためには他の天体に移住する他なくなった未来。
惑星セレステへ向けて航行する一隻の宇宙船には、乗員がたった1人しかいませんでした。
何故なら、酸素供給システムの不具合から、1人だけなら長期間もつという事で、エレナの両親は何年も前に船を出ていたのです。
自分たちを犠牲にした両親に報いるため、狂いそうな孤独の中、旅を続けるエレナ。
しかし、頼みの綱である修理エンジニアが来訪する時がようやく訪れます。
両親以外の人間との初めての出会いに興奮を隠せないエレナ。
やってきたエンジニアはアレックスと名乗る男性でした。
寡黙ながら、どこか優しさをのぞかせる目をしている彼に興味深々のエレナは夕食を一緒にどうかと誘います。
短い会話ながらも、エレナの孤独を理解するアレックス。しかし、修理が完了すれば帰還しなければなりません。
最後の夜、意を決したエレナは眠っているアレックスの上に跨り、「キスも知らない。嫌ならやめる」と、唇を近づけるのでした。


・・・以上が序盤20分ほどです。
この後、2人は結ばれつつも、アレックスは予定通り帰ってゆくのですが、ここが本作一番の見どころに他なりません。
一切の台詞なしでサプライズを演出していますが、映画ならではの「画だけで説明する」という事に徹していて非常に巧み。
ネタバレいっさい無しで観れば、かなりのショックを味わえるのではないでしょうか。
ただし、他にも同様のトリックが使われている作品はかなりあるので、映画を観てれば観ているほど予想がついてしまって驚けない可能性は高いですね。
つまり、アイデアのオリジナリティという点では既に枯れていて、さほど評価できるわけではありません。
ここから先は多少、陳腐なお話になっていってしまうこともあり、本作の評価の殆どは、アレックスが船を出てゆくところまでに集約されているといっても過言ではないと思います。

基本は恋愛ドラマでして、適当にアクションをはさみつつも終盤は大した盛り上がりもなく、「そうするしかないよね」という帰結をむかえるに至ります。
予算が潤沢な「パッセンジャー」の様な大作では無いので豪勢にCGを多用したスペクタクルシーンは無いし、作品のテーマ自体がそういった派手さとは無縁なのもあって、かなり静かなラストは、SF=宇宙活劇や破壊描写だという先入感があると拍子抜けしてしまうほど現実的なので気をつけた方が良いかと。
あくまでもSFなのは、表現するためのガワだけであって、提起している本質は「生きるために必要なものは何か?」という極めてシンプルで日常的なものだと思いました。

全体的に悪くはないのですが、やはりどうしても既出の「パッセンジャー」や、NETFLIXの「タイタン」、そして、どこでも書かれていますが「○○○ー○○○○ー」を観てしまっているので個人的にそこまで新鮮さを感じ得なかったです。
あと、不満が1つ。
「ヒドゥンフェイス」では全てをさらけ出してくれたクララ・ラゴが背中ヌードのみだったのが・・・(汗)
でも情熱的なキスシーンではアレックスが羨ましくなってしまいました。

多少おとなしめではありますが、カメラワークなどの演出面では素人目にも見るべき点が多いと思いますし、「低予算でもSFは撮れる」という事を証明する映画が、映画史にまた新たにひとつ記されたと、観てみるのもSF映画好きなら一興かもしれませんね。


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