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女は二度決断するのペインのレビュー・感想・評価

女は二度決断する(2017年製作の映画)
3.9
“真面目な、いや、これが通常営業のファティ・アキン”。

フォロワーさん周りで投稿している人が何故か多く、監督は誰だ?と調べたところ、お!ファティ・アキン!となり鑑賞。

一昨年の私のベスト映画の1つでもある、あの狂った輝きを放つ怪作『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』の監督。“あの『屋根裏~』の監督”という認識をしているのは私含め、ごく少数の人かもしれないが。

というのも『屋根裏~』は、ファティ・アキン作品としてはかなりイレギュラーな、“ネジの外れた1作”であるからだ(※更に詳しく言うなれば、カンヌ映画祭に出品はされるもブーイングが起こるタイプの作品)。

一方で彼は、36歳の時点で世界三大映画祭すべてで受賞経験済みという現代ヨーロッパを代表する“立派な”巨匠でもあり、それこそが一般的なパブリックイメージ。本作『女は二度決断する』はまさにそのカンヌ映画祭で歓迎されるタイプの硬派な作りの作品で、実際にコンペティション部門でパルムドール(最高賞)を競った。

本作は、愛する夫と息子をテロ(ネオナチ)によって奪われた主人公の女(ダイアンク・ルーガー )の“二度の決断”を描く。法廷劇としての見応えもあるが、やはり随所に巧妙にこの監督の攻めたホラー演出も垣間見られる(お風呂♨️場での腕をアレしてアレするシーンや終盤の復讐劇展開)。

誰かがレビューで、若松孝二監督の名作タイトルに掛けて、“ゆけゆけ二度目の妻”と言っていたのは言い得て妙。あと最近観た作品ではミシェル・フランコ監督の『父の秘密』にも少々だが似た味わいがあった。復讐なんて虚しいだけだ…。
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