MasaichiYaguchi

女は二度決断するのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

女は二度決断する(2017年製作の映画)
4.0
ドイツの名匠ファティ・アキン監督がダイアン・クルーガー主演で、突然起こった悲劇で家族を奪われた悲しみのヒロインが、追い討ちかけるように被る理不尽を通して最後の「決断」に至るまでをエモーショナルに描く本作は、ラストの衝撃度も含めて激しく心を揺さぶる。
トルコ移民男性と結婚して一子をもうけたヒロイン・カティヤを襲った悲劇の背景には、欧州全体を覆う移民・難民問題に端を発した極右政党の台頭や排外主義の高まりがある。
このような問題をモチーフで取り上げると社会派作品になりがちだが、ファティ・アキン監督は飽くまでカティヤの視点で、パーソナルな物語として描いていく。
映画は「家族」、「正義」、「海」という3章構成で、各章におけるヒロインの「色(心の色)」があり、その「色」をダイアン・クルーガーが見事に表現していて、観ている我々は思わず彼女に感情移入してしまう。
この作品は「ドイツ警察の戦後最大の失態」と呼ばれる実話を元にしているが、被害者であるヒロインが、夫がトルコ移民で前科持ちとか、薬物問題とか、本筋とは関係ないところで理不尽に足をすくわれる様を浮き彫りにする。
不条理な悲劇に見舞われ、理不尽な決定を下された彼女はどのような決断をして実行に移すのか?
予想だにしない結末は観る者を置き去りにし、欧米だけに限らない、世界を覆う切実な問題を提起する。