misty

女は二度決断するのmistyのネタバレレビュー・内容・結末

女は二度決断する(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

フィクションなのだけど手持ちカメラのブレがドキュメンタリーぽさを出しており、決して他人事でもなく事実から着想を得た物語なのだと強烈に訴えかけてくる映像だった。ダイアン・クルーガーの、何をしててもただ溢れてくる涙というのが芝居ではなく憑依だと感じた。

夫とは大麻つながりで結婚したり、全身にタトゥーを入れてたり、カティヤ自身も模範的社会からちょっとだけ離れたところにいる人、彼女の弁護士もまたラテン系の人で、対する加害者ネオナチ組は見事に白人、弁護士もまた白人、そして裁判官たちも白人で、まあその結論かよと そうですわなと つらい

タイトルからしてきっとこういうエンドであろう、というのは分かるのだけど先が読めるからと言ってダメかというのは絶対違う。エンドロールに流れる歌詞と、上から下へ落ちてくる水平線とゆれる水面がひとつの答えの提示なのかもしれなかった。方法ではなく、場所を聞いて。体を休めて。

原題”AUS DEM NICHTS” そして英題IN THE FADE. ausは「外に出る」というニュアンスで使われる助詞で、nichtsにfadeを当てるのがまた良いなと思った(ausとinを対応させたのは謎だったが)原題から読むと「虚無から抜け出した先にあった決断」英題だと「虚無の中で下した決断」て感じになるのかな。

だからラストシーンは、カティヤはもうnichtsの中にはいなかったんだ、抜け出してたんだ、抜け出したうえでこうすることを選んだのだと思うと、人を憎むこと殺してやりたいと渇望すること、それ以上に「憎んだわたしも一緒に行こう」と思える人の、ある形での、平和や優しさ慈しみへの祈りを感じた。

リストカット+お風呂のシーンは本当に、本当にしんどかった。思い出したくないものを持っている人も、映画観た人のなかにはきっとたくさん、いると思うな。配慮がないとは思わないけど、とても辛かったな。
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