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女は二度決断するのslowのネタバレレビュー・内容・結末

女は二度決断する(2017年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

運命の悪戯、タイミングの妙、などの満足度で言えば『そして、私たちは愛に帰る』。しかし、本作のラストには痺れた。

彼女は二度決断する、とあるのは死の覚悟なのか。彼女は爆弾テロによって家族を失った喪失感の末、一度はバスタブで死を選んでいる。しかし、留守電のメッセージに突き動かされるように間一髪回避し、復讐に向かう。そして、二度目の決断は最期の自爆となる。彼女の選択は心情的には当たり前だと観客は思うだろう(そう思わせるように作ってあるので)。その心理も危険ではあるけれども。
裁判で聞いたことが彼女の決断に少なからず影響したのではないか。家族がどのような最後を迎えたか。あれ程事細かに聞いてしまうと、復讐を果たしたところで生きていることなどできなくなるかもしれない。だから、自爆を選んだようにも思う。同じ苦しみの中、わたしもそっちに行こうと決断したのかも。それは動画に残された子供の呼ぶ声も影響したかもしれない。しかし悲しいかな、絶望的な場面であろうがお腹が空いてしまうように、こんなにも死にたいと思っていても身体は普段通り生理現象を受け入れている。ここで全て止めて、平穏な暮らしに戻ろうか。そんな考えも頭に過ってしまったのかもしれない。英題が意味するのはそういうこと。
様々な要素がカティヤの復讐を前進させたり後退させたり、彼女の葛藤が滲む表情は鬼気迫るもので、決断後キャンピングカーの前で見せた迷いなき眼の凄味と、裏腹に冷静な佇まいには震えてしまった。
最近某大統領支持者が過激な犯罪に走っているというニュースを聞くけれど、結局これは後の日本の話、なんてことにならなければいいけれど。

それにしても、ファティ・アキンのエンディングとエンドロールはセンス抜群だった。『そして、私たちは愛に帰る』でも感動したけれど、本当監督の残す余韻が好き。
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