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女は二度決断するのkenのレビュー・感想・評価

女は二度決断する(2017年製作の映画)
4.0
ダイアン・クルーガーの圧巻の演技に惹き込まれた。夫と最愛の息子との幸せな日々が、突然のテロリストによる爆破事件で2人を同時に失うという悲劇に変わる。

法廷では遺族にもかかわらず、被告人の弁護士による容赦ない攻撃に誰もが怒りを感じるに違いない。深い悲しみの中であれ程までに打ちのめされるのかと思うと、余程の覚悟がなければ精神的にも耐えられない。更には、事件と直接関係無いことで不利な情報が開示され、証人として適格かどうかまで疑われる。かけがえのない家族の為に、強固な意志が無ければとても太刀打ち出来ないことを思い知らされた。

この映画は実話を元に製作されているが、卑劣で非道なテロリストが無罪になるとは本当に信じられない。状況証拠が揃っていても、決定的な証拠が無く、且つ「疑わしきは罰せず」により何と無罪判定となる。しかし、無実ではないと云う。遺族の気持ちを考えると、これ程酷い仕打ちはないのではないか。

法廷でテロリストが無罪になること自体あり得ないと思うが、決定打が無ければ有罪にはできない。法の裁きが無い以上、主人公が思い詰めた上での行動は復讐しかない。しかし、その決断は途中で変わる。ラストシーンは実に切なくて言葉にならない…。こんな理不尽な事があっていいのかと思うのは私だけではないだろう。

主人公はテロリストに屈した訳ではない。しかし、生きる目的や喜びを見出せず、この選択肢になるのかと思うと、人としてこれ程辛いことはない。尊い命を奪うだけでなく、遺族の生きる望みさえも奪い取ったテロリストは、本来は有罪で無期懲役か死刑が当然だと思われる。
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