アキラナウェイ

女は二度決断するのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

女は二度決断する(2017年製作の映画)
4.4
爆発により爆風が発生し、その影響で子供は上気道の粘膜を損傷、肺の膨張による気圧外傷と肺出血も併発。
次に破片による損傷。子供の上腹部に3cmの裂傷があり、金属片が深く刺さっていた。金属片を取り除くと小腸・大腸・肝臓の損傷と腹部大動脈の切断を確認。
胴体の前部に14個の傷が認められた。10cmの釘が刺さった跡である。爆発で1,000度まで上昇した熱も損傷の原因である。頭部・顔面・胴・腕・大腿部の前面に熱傷を確認。頭髪は前頭部を中心に骨に至るまで焼け、眼球も熱により融解。右前腕は体からちぎれて6m先に吹き飛ばされていた。

本編からの引用であるが、夫と6歳の我が子が爆破テロの被害に遭ったとすれば…。言葉を絶する。

ドイツのハンブルグで暮らすドイツ人のカティヤ(ダイアン・クルーガー)は夫であるトルコ移民のヌーリと愛息ロッコと暮らしていた。ヌーリの会社が爆破テロの標的になるその日まで。

化学肥料と軽油と大量の釘を詰めて製造された爆弾は、幸せな家族の未来を奪った。

馴染みのない、ドイツの移民問題。
外国人差別、偏見、そしてネオナチによる極右思想。

それら映画の骨格にダイアン・クルーガーの演技が生々しい血となって流れ、重厚なドラマを描く。
ドイツ語の響きも、よく降る雨も、
堅く、冷たく、そう、釘の様に心に刺さる。

監督のこだわりを感じさせるショットのいくつかに感銘を受けた。

喪失感、怒り、絶望感。

あらゆる感情がないまぜになって、その魂は何処へ彷徨うのか。事件発生、法廷劇、その後…彼女は何処へ向かうのか。

タイトルが俊逸と思って観始めたが、一度目、二度目の決断を探そうとするバイアスが掛かってしまうので、別タイトルでも良かったかも。正直に言ってカティヤの心情は台詞で表わされる訳ではないし、決断は一度や二度ではない筈だ。何度も死にたいと思っただろうし、何度も殺してやりたいと思っただろう。

彼女が最後に下した決断。

それがもう凄まじ過ぎて、一気にこの映画が凄いと思わされる破壊力が確かにあった。

ああ、それにしても冷たく、重い。

お口直しに楽しい映画観ます!