おさる

女は二度決断するのおさるのレビュー・感想・評価

女は二度決断する(2017年製作の映画)
4.3
不条理

裁判で真実によって裁かれ、正義は貫徹されるというのはいかにイル―ジョンかを感じさせられる。

疑わしきは罰せずの法理を選んだ我々の世界なら、浮かばれない被害者とその家族をゼロのすることはできない。
浮かばれない被害者が復讐を選ぶことは否定できるのか。
復讐を果たした被害者は、今度は加害者となって裁かれる運命となる。
女はそれを選ばなかったが、しかし復讐を果たす道をもあきらめなかった。

日本人のまだ半数以上が死刑を望むことは、人権意識や冤罪への認識が低いという説明だけではないのかもしれないと映画を見て思った。
日本人は自分では復讐しないが、国家に復讐の役割を任せたいのかもしれないと思った。
女は国家にはそんな機能はないと悟って、さらなる法的手続きなど選ばなかった。死刑のない国は人権意識が高いだけではないのかもしれない。究極の復讐の手段を国家に委ねるなどとは、そもそもお門違いという意識なのかもしれない。

ネオナチ側はネオナチ側で自分たちの正義を叶えて歓喜に満ちた。クルド人が死ぬことが自分たちの正義だった。
彼らはもしかしたら、薬物犯罪がらみ外国人に被害を受けたことがあったのかもしれない。それなのに、外国人は自分たちの社会に大きな顔をして生活していると思い込み不条理を感じていたのかもしれない。

もしかしたら日本で中国・韓国をやたらと排斥しようとする人々も、何か不条理を感じていて、だから復讐しようとしているのかもしれない。

当たり前と思うことが、ひょっとしたら違うのかもしれない、と無限の思考へいざなうすごい映画だった。
おさる

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