KellyYaezho

BPM ビート・パー・ミニットのKellyYaezhoのレビュー・感想・評価

5.0
試写会にて拝見。
その世界ではつとに高名な北丸先生のトークショー付きということで、当選したときは本当にうれしかったー!
(Filmarksさん、ほんとうにありがとうございました!)

さて、80年代からゲイムービーを追いかけてきた自分としては、懐かしいなーというのが第一印象。
90年代初頭の、エイズ・クライシスのために世界が大激震していたころの物語だ。
私にとっては、ついこないだのこと…という印象だが、光陰矢の如しで、今20代の方だと、エイズクライシスが終了したあたりに生まれた計算になる。

デジタルネイティブな若い方がこの映画を見る前に、まず知っておいてほしいと思うのは、90年代初頭は、インターネットどころか、携帯電話すらまだなかった、ということ。
いや正確には存在したけど、当時の「携帯電話」と呼ばれた代物は、ショルダーバッグぐらいの大きさがあった。IT時代はまだ遠かったのだ。そんな言葉すらなかった。
そこを踏まえたうえでご覧になると、ACT UPの抗議活動の手法がなぜああいうものだったか、よくお分かりになると思う。
確かに、彼らの活動は一見過激に見えるのだが、今に比べるととてもアナログな手法ばかりで、ちょっと牧歌的な雰囲気を感じた。

北丸雄二さんは、まさにそのエイズクライシスまっただ中のNYに記者として駐在していらしたとのことで、大変貴重なお話を伺うことができた。
個人的にはもっともっと伺いたかった。

ともあれ、当初この映画のあらすじを知った時、やはり「なぜ今頃?」と思った。
しかし、自分にとっては、過ぎてきた過去を振り返ることであっても、今の20代の皆さんにとってはきっと「初めて知るようなこと」であるという事実を改めて気づかされた。
これを機会に、歴史を学ぶような感覚でもいいので、こんな時代があったのだ、ということと、HIVとエイズについてちゃんと認識を新たにする機会になると素晴らしいな、と思う。
日本は良くも悪くもエイズクライシスを体験しなかったので、相変わらず無知な状態が続いて、患者数は残念なことに増えている。
試写会会場の外で、HIVエイズの小冊子とコンドームを配布されていたのには、大変感銘を受けました!

また、北丸先生も仰っていたが、もっと大きな視点での見方もできる。
今のように世界的に旧態依然とした価値観と、新しい価値観がぶつかり合っている時代に、どうあるべきかということを考えさせてくれる。
そういう風にも考えると、なるほどカンヌのグランプリも納得だ。

そして、映画としてみたときに、一番驚いたのは、とにかくリアルだってこと!!
映画だとわかって観に行っているのに、「あれ、これはドキュメンタリーだったかな?」とつい思ってしまう。しかも何度も。
たまに映像的演出などがでてくるから、「あ、そうだ映画だったなこれ…」と思い出すのだが、またすぐにドキュメンタリーだっけ?と思う。
特に、皆さんご指摘されているが、あの会合のシーンは本当にすごい。カメラワークを見ると明らかにドキュメンタリーじゃないのだが、あまりにリアルで、逆にあれが脚本があって演出されたものだということのほうが驚くくらいだ。
映画を作る側の世界を目指す方には、とてもいい勉強材料になるのではないかなあ~と思った。

役者さんたちも、本当にリアル。素晴らしかった。よくよく見ると、結局美男美女なので、「ま、…映画だもんね」と思うのだが、フツ―のあの時代の若者たちの物語に見えてしまうのだ。
そして北丸先生も言っていらしたけれど、この映画のベッドシーンはほんとに美しかった。ライティングとカメラワークが絶妙なのももちろん大きな理由だと思うけど…。リアルなゲイカップルを描いた作品のベッドシーンとして考えると、かなり美しいと思うし、ストーリー上の流れの中でも自然だ。
男性同士のそういうシーンは、ストレートの男性にとっては抵抗のある方も当然いらっしゃると思うけれど、この映画はかなりイケているのはないかと思ったが果たして。
KellyYaezho

KellyYaezho