えびちゃん

BPM ビート・パー・ミニットのえびちゃんのレビュー・感想・評価

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彼らは憤っていた。公表されないエイズ新薬の治験結果、政府の対応、セクシュアリティ差別、副作用が酷い治療薬、進行が止まらないHIV/エイズ、死の恐怖に。
かつての自分たちのように知識がないために罹患してしまった被害者を一人でも減らすため。文字通り命をすり減らしながら抗議活動を続け、一瞬一瞬を生き切った彼らの生きざまに胸が苦しくなった。
仲間だった彼の病状が悪化し、別人のようにみるみる痩せ細っていく。そして友人の変わり果てた姿に、近い将来の自分の姿を見る。逃れられない死が自分にもすぐそこまできている、ということを嫌でも思い知らされる恐怖は到底想像出来ない。人はいつか必ず死ぬ。わたしたちはいつどこで死ぬかわからないから死に怯えず日々を過ごすことができている。エイズです。治りません。そろそろ死にます。と言われたら。どんなに孤独で恐ろしい気持ちを抱えたまま日々を過ごすのだろうか…。
"知ること"がなにより大事だと改めて強く思わされた。ゲイじゃないから関係ない、ではないのだ。
逸れるけど、"ゲイっぽい"とか、"ホモくさい"とか、そんな類の言葉。笑いをとっているつもりなんだろうけど本当はとても不愉快。カムアウトしていないだけですぐそばにいるかもしれない。わたしも知らず知らず発言しているかも。気をつけなくてはいけないな。
白熱した議論の後お決まりにクラブにいく。ヒートアップした後でも後腐れなく闇と音楽に溶け込んでその場に身を委ねることができるアクトアップの人間関係が素敵だった。
重くて疲れた作品だった。でも80〜90年代に実際こうして抗議活動が行われていたと知ることができてよかった。
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