MasaichiYaguchi

2重螺旋の恋人のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

2重螺旋の恋人(2017年製作の映画)
3.8
原題〝L’amant double〟を直訳すると「二重の恋人」になるが、アメリカのジョイス・キャロル・オーツの短編小説を原案にフランソワ・オゾン監督が映画化した本作では「二重」のイメージ、双子、鏡に映るもの、シンメトリーな建物や螺旋階段、類似性を喚起するメタファーが登場し、繰り広げられるエロティックでサスペンスフルなストーリーを彩る。
慢性的な腹痛に悩まされている25歳の女性クロエは、その痛みが身体的要因というより心理的要因と考え、精神分析医ポールの治療カウンセリングを受け始める。
ポールの穏やかさと優しさで包む治療によって癒されていくクロエだったが、街でポールと瓜二つな男を見掛けたことから物語は急展していく。
このルイと名乗る男は見た目は同じでもポールとは真逆な性格で、〝癒し〟ではなく〝渇き〟や〝欲動〟をクロエに与える。
ルイとポールの関係や、そこにある真実をクロエが追求していく中で、我々観客もフランソワ・オゾン監督が仕掛けた〝術中〟に嵌っていく。
ミステリアスに満ちた本作だが、〝キー〟となるものが幾つも出てくる。
本作のテーマに繋がると思われる鏡、母なるもの(子宮)、クロエを見守る猫、恰も彼女の心象風景のような美術館の展示物、これらが我々観客を十重二十重に囲み、やがて現実と幻想の境界が曖昧になって、映画が作り出す迷宮に誘っていく。
一件落着したかのような結末に訪れる〝サプライズ〟が如何にもフランソワ・オゾン監督らしいと思う。