Jin

ビューティフル・デイのJinのレビュー・感想・評価

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)
3.6
“行きましょ。今日はいい天気よ”



元虐待児童で元軍人、老いた母親と暮らしながら「殺し屋」として生計を立てる主人公が、トラウマに苦しみながら少女を救う物語。

トラウマの塊である主人公の精神世界の描写に引き込まれる。
音楽や、現実と混ざる幻想、顔色を変えないながらも滲み出る演技がその複雑でえぐい世界を映し出す。

淡々とハンマーで惨殺する殺し屋のはずが、誰よりも優しいクマのような大男に見えてくる。
PTSDに苦しみながら、母親を見捨てて死ぬことができない主人公が、出会う少女は自分の過去と重なる。この女の子もまた演技がすごい。壮絶な人生への虚無感と表情に見せない恐怖感の素晴らしい演技。

誰よりも平穏な生活を求める「殺し屋」の感情が最後の会話に詰め込まれていてグッとくる。

過去に縛られて苦しく生きるのでなく、ただ、今を楽しむために生きたい。
その理由は、ただ天気がいいから、というだけでもいい。

もう少し過去を説明してもいいかなとは思ったけど、言語化できないトラウマの世界を強烈に見せつけられる映画だった。
Jin

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