コミヤ

ビューティフル・デイのコミヤのレビュー・感想・評価

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)
4.3
原題はyou were never really hereだけど、これが本作の本質をかなり表してる。

自信はないけど本作は肥大し過ぎて現実を覆い隠す誇大妄想にまつわる話なのだと思う。幼少期のトラウマ、戦争によるPTSDなど、それらは確かに過去に実際に起こった悲劇的な出来事によって引き起こされる。人間というのは過去の記憶に囚われてありもしないような妄想をし、常に自分自身を苦しめている。でもそれは妄想に過ぎない、つまり"never really here"だ。そんなこと気にしてたら人生もったいない。今日は"beautiful day"じゃないか!楽しく生きようぜ😁みたいな明るいメッセージを感じた。自分も過去のことをいつまでも気にするような人間なのでちょっと考えさせられた。

監督の前作「少年は残酷な弓を射る」同様、恐らく何か悲惨な出来事によって心を痛めた主人公の過去が回想として断片的に挿入される。そして物語が進むにつれて、その断片が形を持つようになる。なので観客は現在の主人公の動向のみならず、その過去に対する好奇心の二つ惹かれることになる。
このような構成で前半早々に引き込まれた。すると中盤から物語が加速し始め、ジャンル映画的な様相を見せる。この展開もめちゃくちゃ好みなので興味が途切れることはなかった。そしてこのまま物語が終わるのかと思った矢先、何とも不思議な展開となる。

説明の極端に少ない映画だけど、独特の構成と編集、不安を煽る不協和音、そしてホアキンの狂気の演技などコンパクトに魅力が詰まった映画でした。
コミヤ

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