アタフ

ビューティフル・デイのアタフのレビュー・感想・評価

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)
3.9
オープニングのプロフェッショナルな殺し屋っぷりや音楽の使い方がニコラス・ウェンディング・レフンの『ドライブ』を想起させる。予告編を見た感じは『レオン』や『タクシードライバー』のような映画かと思ったが違った。いや…似てるんだけどなにかが違う。

殺し屋であるホアキン・フェニックスはトラウマを背負っており、ところどころに挟み込まれるフラッシュバック映像が強烈だ。幼少時代や軍人時代のトラウマシーンが挟み込まれるが、それについてハッキリとは語られない。だからこちらが汲み取るしかない。
ストーリーについても同じことが言えて、しっかりと物語を説明するような映画ではなく、現実と妄想と過去のフラッシュバックがごっちゃになった所謂デヴィッド・リンチ的な映画と言えます。

そのホアキン・フェニックスが少女売春組織に捕らわれた少女を救出に向かうわけですが…
なんだろうこの感じ…???"少女を助ける殺し屋"という撮り方次第ではハートウォーミングであったり彼を英雄のようにも演出することもできる題材だと思うのだがこの映画は全く違う。
物語が進むにつれ鳴り響く不協和音とともにどんどんと狂気が増していく。少女を助けられるかどうかのサスペンス的な映画ではなくホアキン・フェニックス自身の"闇"についての映画だったように思う。

ラストはいろいろな解釈ができそうだ。あの二人はどうなるのだろうか?ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかもあやふやである。
トラウマを背負った元軍人の殺し屋と少女売春で抜け殻のようになってしまった少女。闇が深すぎる二人の悪夢のようなサスペンス映画だった。
デヴィッド・リンチやニコラス・ウェンディング・レフンが好きな自分としては好みの映画だったため。リン・ラムジーという監督も今後注目したい。

余談…ヒューマントラストシネマの雑な鑑賞のマナー映像が好きだ。あの雑なデザインのキャラクターたちが地味~~にガサゴソと鑑賞マナーを伝える映像がなんだか癖になる。ついでにマルマーレのCMも好き。
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