ShinTakeuchi

ビューティフル・デイのShinTakeuchiのレビュー・感想・評価

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)
4.0
削ぎ落とした描写は判りやすいとは言い難いが、高密度な映像と、これに被さるジョニー・グリーンウッド(レディオヘッド)によるソリッドなデジロックの組み合わせがクセになる。
主演のジョー演じるのはホアキン・フェニックス。これが「当て書き」かと思うほど素晴らしい。
ジョーはさらわれたり児童売春させられている子供を探し出す失踪捜索人。ただし手段は問わない。子供を助け出すためには殺しも厭わない。
彼は戦争や、自身が虐待されていた過去のフラッシュバックに苛まれ、虚ろな目をし、自殺願望に取り憑かれている。死んでいるように生きている彼だが、敵と戦うときだけスイッチが入ったように「生き」、その結果、敵は死ぬ。
そう、この映画は、生と死の境界線上に存在している。
ある日、上院議員から売春組織に囚われている娘のニーナを救出してほしい、という依頼が入り、彼はより大きな事件に巻き込まれていく(…というストーリーは「タクシードライバー」を思い出さずにはいられない)。
差し込まれるフラッシュバックの映像、「仕事」を終えて帰宅したとき、彼の母親が観ている映画は「サイコ」(母親の異常な支配から精神に異常を来たした青年が、その母親を殺す映画である)、など、この映画は狂気で満ちており、そしてラストにはニーナもまた狂気を見せる。
そして、こうした狂気を生んでいるのは、虐待や小児性愛など、子供を弄ぶ大人の歪んだ愛や欲望だ。
原題は「You were never really here」、君は本当はここにはいなかった。
過酷な過去を葬り、未来へ向かう希望を感じさせるラストに救いを感じた。
ShinTakeuchi

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