マクガフィン

ビューティフル・デイのマクガフィンのレビュー・感想・評価

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)
3.5
酷い状況から少女・ニーナを救出して、双方各々のトラウマが解放される幻想的サスペンス。

過去のトラウマと戦争のPTSDにより強いタナトスに苛まれている寡黙な男を、繊細な表情や仕草から心象が醸し出される演技力に感心する。幻視やフラッシュバックの心象の断片を繋いでいく模様も効果的で、次第に心情が伝わってくるシークエンスと、現実と虚構の揺さぶりも興味が尽きない。

説明セリフを排除した語り口に好感で、背景を見せないで想像を喚起する、寄りの映像が多い構図も作品のテイストにマッチする。しかし、辛辣な音にノイズを混ぜたようなソリッドな音楽は、主人公の鼓動表現や背景音楽なのだが、何度か耳を塞ぐことになり、許容範囲外に。映像と音楽が張り詰める緊張感を高める演出でもあるのだが。

過去を打破するメタ的だが、片手ハンマを振り下ろすたびに心が異常昂揚しているような奥深さが、戦争の悲惨さを表すようにも。水中シーンの心象も味わいを深める。

ニーナもトラウマ抱えており、感情が欠落していることが、純粋に見えるようで悲しい。心に深い傷を負った双方のパーソナリティのトラウマが両者の心が触れ合うことで繋がり、浄化するような静かな余韻が奥深い。

演出や設定に疑問もあったが、多くを語らない独自な作風は興味が尽きなく、相性は良かった。