チョマサ

ビューティフル・デイのチョマサのレビュー・感想・評価

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)
5.0
10/12

・『少年は残酷な弓を射る』のリン・ラムジー監督の新作。前作から6年ぶり。

・この映画も『少年は~』と同じく親と子の物語で、今回は子ども側に焦点をあててる。ジョー(ホアキン・フェニックス)は子どもの頃に父から受けた虐待がトラウマになって、それを今も引きずっている。イラク従軍のときの経験も原因になって彼の心は完全に壊れている。それが少女を助ける過程で救われていく?ように見える。

・この映画は音響がすごいから、映画館で見たほうが楽しめると思う。アクション映画ではないし、ド迫力のシーンがあるわけでもないんだけど、今まで観たどの映画よりも映画の内容に密接した音楽になっている。冒頭のタクシーに乗っているときのビートの効いた劇伴と、ジョーが効いている街の喧騒をそのまま体感させる音響が印象に残る。うまくいえないけど、音の存在感が段違いだった。ジョニー・グリーンウッドの音楽については、パンフレットで宇野維正さんが解説していて、この映画の音楽の付け方が他と違うのが分かる。

・パンフレットやインタビューで語られているのだけど、原題だと『You Were Never Really Here』で、高橋論治さんのレビューだと「お前はまったくもって存在していなかった」といった意味らしい。ジョーの心が少年のときや赴いた戦地にバラバラに囚われていて、今この場所に心在らずってことなんだろう。トラウマが蘇るたびに、ジョーがパニックを起こす様子がすごくて、ベッドに座って自分に言い聞かせる場面もよかったけど、最後のファミレスの場面が凄まじい。自身への嫌悪感をあんなに衝動的に見せる場面は中々ないと思う。ジョーの効く音を聞かせてるのも、彼と観客を共感させようと演出してる。

・ジョーの母親との関係を『サイコ』の場面で暗示してるのかと思ったけど、あれは最後は母から解放されることを示す伏線だったのかも。

・ニーナが再びさらわれてからは、ちょっと見逃したので、このレビュー的はずれかもなーと思う。音楽が本当にすごかったから5にした。
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