図師雪鷹

ビューティフル・デイの図師雪鷹のレビュー・感想・評価

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)
4.3
松本シネマセレクト・爆音映画祭にて



捜し屋で生計を立てるジョー。彼は老母とニューヨークで暮らしていた。ジョーは退役軍人で、FBI捜査官という職にありつけたが、PTSDと鎮痛剤の依存が原因で辞職し、今の職に就かなければならなかったのだ。

ある日、ジョーのもとにいつものごとく依頼が飛び込む。相談相手はヴォット上院議員。娘を捜してほしいとの依頼だった。
だが、その依頼は思いもかけない方向へとジョーを連れて行く。


ジョーは割と容赦ない。自分の敵は基本的に殺す。過去に失ったものの多さが彼を目的へと駆り立てるのだ。屈強な男であるのに、過去(幼少期のトラウマ、失った恋人)に悩まされ縮こまるシーンが自分には新鮮に映った。そんな男が出会ったのが、ヴォット上院議員の娘ニーナ。ジョーが多くの別れを経験するたびに、ニーナの存在はジョーにとって必要不可欠な存在になっていく。


ビジュアル面がずば抜けていたと思う。特に一番好きなのは湖のシーン。多くある別れのシーンのうちの1つだが、生と死の間でもがくジョーと、ニーナへの願いが荘厳な静寂の中に表現されていたと思う。

音楽も非常にこの映画とマッチングしていた。作曲者はレディオヘッドのジョニーグリーンウッド。特に、変拍子の曲がこちら側の意識を映画へ没入させることに特化していた。


最後のシーンで、ジョーの孤独が一番よく描写されていた。彼の涙を拭き取ったのはとても陳腐な言葉。
だがその声は若さに満ちた明るいものだった。ジョーの喪失を、例え一時的だとしても埋めてくれるような。
図師雪鷹

図師雪鷹