きえ

ビューティフル・デイのきえのレビュー・感想・評価

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)
4.1
期待以上の作品だった。ポスターの印象からレオン的な作品かと思っていたらとんでもなく深い内容でカンヌで脚本賞&男優賞を受賞し7分間のスタンディングオベーションを受けたのは納得。

ホアキン演じる孤独に生きて来た男が1人の少女との運命的な出会いによって止まってしまった心を再び動かす迄をバイオレンスとスリラーで見せて行くのだけど内容に反して映像がとても美しい。そこに加えて70年代の音楽が重苦しさの中で凄くいいアクセントになってる。音の使い方も上手い。知性と品を感じるバイオレンス作品である事は間違いない。

2人を繋ぐのが"心の傷"と言う切ない設定なのも物語の深くに入り込める。現実と妄想、現実と過去の記憶が入り混じる映像は不安と混乱を観客に齎し男の孤独の内側に気付かされていく。暴力性と優しさの二面性はどうして生まれたのか… 台詞を最小限に抑え寡黙な男の真実を映像が導いて行く潔さ。そのあまりの真実に心が震え泣き衝撃のラスト含め完璧な作りだ。

原題『 YOU WERE NEVER REALLY HERE』は時が止まったままの男の心そのもので邦題『ビューティフル・デイ』は未来への予感を感じる。これは少女が放った言葉でもあるのだけど今回の邦題に関してはいいお仕事をしたと思う(いつも変な邦題ばっかだけど)

好きなシーンをあげるならシャーリーンの『愛はかげろうのように』を男が口ずさむシーン。歌詞が台詞の様に男の孤独に符合し感情を一気に持っていかれた。

心の傷を齎す深い社会問題が織り込まれていながらスリラーとして楽しむ事が出来るオススメな作品です。
きえ

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